死亡診断書200人超を無診察で作成|86歳医師書類送検で露わになった「みとり医」問題を内科医が解説

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死亡診断書200人超を無診察で作成|86歳医師書類送検で露わになった「みとり医」問題を内科医が解説

死亡診断書200人超を無診察で作成|86歳医師書類送検で露わになった「みとり医」問題を内科医が解説

メディコレマーク|医師監修済み_2026年3月14日

この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。

📢 このニュースのポイント

  • 「みとり医」とは、夜間・休日に医師不在の施設で死亡確認・死亡診断書作成を専担する非公式の役割です。

  • 医師法第20条は診察なしの診断書交付を原則禁止しており、実際に診察しないで作成した場合は違法となります。

  • 青森・みちのく記念病院の事案では、200人超への死亡診断に無診察の疑いがあり書類送検が行われました。

  • 高齢医師を安価に雇うコスト優先の慣行が問題の背景にあり、医療の質・倫理・法令遵守が問われています。

みとり医とは違法なのか?86歳医師が200人超に無診察で死亡診断書を作成した疑いで書類送検された事案を軸に、法的ルール・問題の背景・遺族への影響を内科医が解説します。

2026年3月、青森県八戸市のみちのく記念病院で衝撃的な実態が明らかになりました。夜間や休日を担当していた86歳の元常勤医が、患者12人を診察せずに死亡診断書を作成した疑いで書類送検されたのです。さらに同病院は、この医師が計200人を超える患者の死亡診断に関わっていたことを公表。理事長は記者会見で「医師を雇い渋り、安く高齢医師を雇った結果」と釈明しました。報道によれば、この医師には認知機能の低下を疑わせる状況があったとも指摘されています。この事案が問うているのは、「みとり医」と呼ばれる非公式の役割の実態です。本記事では、みとり医とは何か、死亡診断書の法的ルールはどうなっているか、そしてなぜこうした問題が起きるのかを医師監修のもとわかりやすく解説します。

今回の事案:みちのく記念病院で何が起きたか

今回の事案:みちのく記念病院で何が起きたか

舞台となった病院:
青森県八戸市の「みちのく記念病院」(医療法人杏林会)。病床数約400、精神科・認知症患者を多く受け入れる地域の基幹病院です。

書類送検された医師:
2023年8月〜2025年2月末まで夜間・休日担当として在籍した元常勤医の男性(86歳)。2026年3月6日付で八戸署が医師法違反(無診察治療等の禁止)の疑いで青森地検に書類送検しました。

容疑の内容:
2025年2月、病院内で亡くなった患者12人を診察せず死亡診断書を作成した疑い。死因の記載は「肺炎」「老衰」が大半を占めていました。本人は「きちんと診察して死亡確認した」と容疑を否認しています。

衝撃の実態:
病院側は2026年3月13日の記者会見で、この医師が在籍期間中に計200人超の患者の死亡診断に関わっていたと公表。理事長は「医師を雇い渋り、安く高齢医師を雇った結果」と釈明しました。さらに病院関係者によれば、この医師には認知症の疑いがあり、「死亡診断書の書き方を看護師に尋ねた」「自分の氏名がわからず署名できなかった」こともあったとされています。

病院の背景:
この病院は2023年3月に入院患者間の殺人事件が発生し、元院長の石山隆被告が犯人隠避罪で有罪判決確定。弟の石山哲被告は現在も公判中です。殺人隠蔽に使われた虚偽の死亡診断書は、当時入院していた別の認知症疑いの医師(既に死亡)の名義で作成されており、今回書類送検された86歳医師とは別人です。同病院のみとり医はこれまでに計3人が判明しています。

「みとり医」とはどのような役割か

みとり医とは何か|法律上の定義は存在しない

「みとり医」は法律や制度上の正式な職名ではありません。一般的には、病院や高齢者施設で夜間・休日に医師が常駐できない時間帯に呼び出され、患者の死亡確認や死亡診断書の作成を専門的に行う医師を指す業界用語です。

こうした医師は施設と非公式に契約し、「死亡確認が必要なときに連絡を受けて対応する」という形で稼働します。在宅医療が普及する以前から、特に地方の医療機関では人手不足を補う慣行として根づいてきました。

みとり医が生まれた背景|医師不足と夜間体制の空白

日本では、死亡診断書は医師が作成する公的書類であり、医師法第20条により、医師が自ら診察せずに診断書を交付することは原則として認められていません。しかし現実には、深夜3時に患者が亡くなっても当直医がいない施設は少なくありません。こうした「死亡確認の空白時間」を埋めるために、みとり医という役割が事実上形成されてきたのです。

みとり医の存在自体は必ずしも違法ではありません。問題は、実際に患者を診察したかどうかです。また今回の事案ではさらに深刻な実態も明らかになっています。書類送検された86歳の医師には認知症の疑いがあり、病院関係者によると「死亡診断書の書き方を看護師に尋ねた」「自分の氏名がわからず書類に署名できなかった」こともあったといいます。診察能力の有無すら疑わしい医師に死亡診断を任せていたという構図は、制度の空白を悪用した極めて深刻なケースです。

死亡診断書の法的ルール|医師法第20条とは

死亡診断書の法的ルール|医師法第20条とは

死亡診断書を無診察で作成してはいけない|医師法第20条の原則

医師法第20条は、医師が「自ら診察しないで診断書を交付してはならない」と定めています。死亡診断書もこの「診断書」に含まれます。つまり、遺体を実際に診察せずに死亡診断書を作成することは、原則として違法です。

【医師法第20条(無診察治療等の禁止)】

医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し(中略)てはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。 (e-Gov法令検索

「24時間以内」はよく誤解されるルール

この条文には「ただし書き」があります。診療中の患者が最後の診察から24時間以内に死亡した場合は、例外的に遺体を確認しなくても死亡診断書を交付できます。これは、たとえばかかりつけ医が診察した翌朝に患者が亡くなった場合などを想定した規定です。

ただし、「24時間以内に診察していない場合は書けない」という解釈は誤りです。厚生労働省は2012年(平成24年)の通知(医師法第20条ただし書の適切な運用について)で、以下のように明確にしています。

【厚労省通知(平成24年8月31日)の要点】

  • 最後の診察から24時間以上経過していても、死後改めて診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡と判定できれば死亡診断書を交付できる。

  • 「24時間を超えたら死体検案書しか書けない」という解釈は誤り。

  • ただし死後の診察で診療中の疾患と無関係の死因が疑われる場合は、死体の検案を行い、死体検案書を交付したうえで、異状死として警察に届け出る義務がある。

なお、人の死亡に際して医師が作成する書類には「死亡診断書」と「死体検案書」の2種類があり、患者との診療関係の有無によって交付される書類が異なります。

死亡診断書と死体検案書の違い|どちらが交付されるか


死亡診断書

死体検案書

作成者

主治医・担当医(歯科医も可)

医師のみ(歯科医は不可)

前提条件

診療中の患者の死亡

診療関係のない患者の死亡、または死因不明

死後診察

通常必要(24時間以内の例外あり)

検案(外表検査)が必要

警察への届出

原則不要

異状があれば24時間以内に警察届出義務

法的根拠

医師法第20条

医師法第20条・第21条

今回の事案は何が違法だったのか

今回書類送検された医師は「みとり医」として夜間・休日の死亡確認を担当していました。しかし疑いの核心は、実際には遺体を診察していないにもかかわらず、死亡診断書に「肺炎」「老衰」などの死因を記載していた点です。

医師法第20条が禁じるのは「自ら診察しないで診断書を交付すること」であり、診察の実態が伴わなければ同法違反(無診察治療等の禁止)となります。罰則規定(第33条の3)により、違反した場合は五十万円以下の罰金に処すと規定されています。

本人は容疑を否認しており実際の有罪・無罪は今後の判断が待たれますが、夜間・休日の死亡確認を安価に雇った高齢医師に頼り、結果として200人超の診断を任せていたという事実は、同院の管理体制の甘さをうかがわせます。

なぜこうした問題が起きるのか

なぜこうした問題が起きるのか

コスト優先の高齢医師活用

「医師を雇い渋り、安く高齢医師を雇った結果」と理事長は発言していますが、日本の医療機関が抱える構造的な問題を端的に示しています。みとり医は施設にとって「夜間・休日の死亡確認におけるコストや人員不足を補う手段」として機能している側面があります。

地域の医師不足が深刻な中、常勤の若手医師を確保するより、引退後の高齢医師を非常勤で安価に頼る方が病院側の負担は抑えられます。しかし、高齢の医師に深夜帯の対応という過度な負担がかかる上、遠方から駆けつける物理的な体制が整っていないケースも少なくありません。その結果、本来あってはならない「電話確認のみで診断書を書く」などの不適切な慣行が生まれやすくなる土壌が作られる可能性があります。

「みとり医」という役割の非公式性

前述のとおり、みとり医は法律上の職名でなく制度的な規定もありません。このため、実際の業務内容や診察の質に関する外部チェックが働きにくい状況にあります。施設内の慣行が優先されやすく、「前任者もそうしていた」というかたちで無診察診断が常態化するリスクがあります。

医師不足と地域格差

特に地方の高齢者施設では、深夜に対応できる医師の絶対数が不足しています。在宅医療の推進が進む一方で、施設系医療(有床診療所・老人保健施設等)の夜間体制整備は遅れているのが現状です。

死亡診断書の虚偽記載が遺族に与える影響

死亡診断書は単なる行政書類ではありません。遺族にとって、大切な人の最後の医療記録であり、死因を把握するための唯一の公文書です。不正確な死因が記載されることで、以下のような影響が生じます。

  • 真の死因が不明のまま遺体が火葬されてしまう(後から死因究明が不可能になる)

  • 他患者による暴力など犯罪が死因であった場合、「肺炎」などと偽装されることで犯罪が隠蔽される

  • 生命保険や労災認定など、死因に基づく請求手続きに影響が出る

  • 遺族が真実を知る機会を永続的に奪われる

みちのく記念病院ではまさに、2023年の入院患者間殺人が「肺炎」と記載された死亡診断書によって隠蔽されるところでした。司法解剖が行われたことで事件が発覚しましたが、遺体が早期に火葬されていた場合、真相は闇に葬られていた可能性があります。

まとめ

「みとり医」は法律上の職名ではなく、夜間・休日に医師不在の施設で死亡確認を担う非公式の役割です。医師法第20条は、医師が自ら診察せずに死亡診断書を作成することを原則禁止しており、実際に診察しなかった場合は刑事罰の対象になります。

今回のみちのく記念病院の事案は、コスト優先で高齢医師を安価に起用してきた慣行が法的・倫理的問題を引き起こした典型例です。死亡診断書は遺族にとって大切な医療記録であり、虚偽記載は犯罪隠蔽にも直結します。

日本が超高齢社会を迎え、看取りの場が多様化する中で、死亡診断書の質と医師の診察実態を担保する仕組みの整備が急務となっています。

よくある質問(FAQ)

Q1. みとり医は違法ですか?

みとり医という役割自体は違法ではありません。ただし、実際に遺体を診察せず死亡診断書を作成した場合は医師法第20条違反となります。診察の実態が伴っていることが必要条件です。

Q2. 死亡確認はかかりつけ医でなくてもできますか?

できます。診療継続中の傷病に関連した死亡であれば、担当医以外の医師でも死後に診察を行った上で死亡診断書を交付することが可能です。ただし死後診察で死因が不明・犯罪性が疑われる場合は死体の検案を行い、死体検案書を交付したうえで警察届出が必要です。

Q3. 最終診察から何日も経っていても死亡診断書は書けますか?

書けます。24時間以上経過していても、死後に改めて診察し、生前の診療中の疾患に関連する死亡と判定できれば死亡診断書の交付が可能です。「24時間を超えたら書けない」は誤解です(厚生労働省の2012年通知で明確化)。

Q4. 死亡診断書の内容がおかしい・受け取れない場合はどうすればよいですか?

死因や経緯に疑問がある場合の相談先は以下のとおりです。①死因に疑問があれば、まず担当医や病院の医療相談窓口へ。②不正・隠蔽の疑いがある場合は、都道府県の医療安全支援センターや保健所に相談できます。③犯罪性が疑われる場合は警察への申告が有効です。なお、遺族には死亡診断書の交付を受ける権利があり、病院は正当な理由なく拒否できません(医師法第19条)。

Q5. 在宅での看取りでも死亡診断書は必要ですか?

必要です。自宅で亡くなった場合も医師による死亡診断書(または死体検案書)が必要です。在宅医(かかりつけ医)が対応できない場合は、在宅医療支援病院や地域の医師会が24時間対応の仕組みを整えているケースがあります。かかりつけ医に事前に確認しておくことをお勧めします。

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参考文献

山本佳奈
山本佳奈
(ナビタスクリニック / 貧血改善協会 理事)
医師のコメント

今回の事案は、個々の医師の問題だけではなく、日本の地域医療が抱える構造的な課題を浮き彫りにした出来事だと感じます。死亡診断書は単なる事務手続きではなく、医学的・法的に非常に重要な公文書です。実際の診察を伴わないまま作成されていた可能性があるとすれば、医療倫理の観点からも深刻な問題と言えるでしょう。

一方で、背景には地方医療における慢性的な医師不足という現実もあります。特に夜間や休日の死亡確認を担う医師の確保は容易ではなく、施設によっては高齢医師や非常勤医師に依存せざるを得ない状況が生まれています。このような体制が続けば、今回のような問題が起こるリスクは今後も残ると考えられます。

超高齢社会を迎え、看取りの場は病院だけでなく施設や在宅へと広がっています。今後は、死亡確認や死亡診断書作成を含めた看取り医療の体制を制度的に整備し、医療の質と法令遵守を両立できる仕組みを構築していくことが重要だと考えます。

医師のコメント

今回の事案は、個々の医師の問題だけではなく、日本の地域医療が抱える構造的な課題を浮き彫りにした出来事だと感じます。死亡診断書は単なる事務手続きではなく、医学的・法的に非常に重要な公文書です。実際の診察を伴わないまま作成されていた可能性があるとすれば、医療倫理の観点からも深刻な問題と言えるでしょう。

一方で、背景には地方医療における慢性的な医師不足という現実もあります。特に夜間や休日の死亡確認を担う医師の確保は容易ではなく、施設によっては高齢医師や非常勤医師に依存せざるを得ない状況が生まれています。このような体制が続けば、今回のような問題が起こるリスクは今後も残ると考えられます。

超高齢社会を迎え、看取りの場は病院だけでなく施設や在宅へと広がっています。今後は、死亡確認や死亡診断書作成を含めた看取り医療の体制を制度的に整備し、医療の質と法令遵守を両立できる仕組みを構築していくことが重要だと考えます。

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