脂肪幹細胞の再生医療で患者死亡、厚労省が緊急命令|安全な施設の選び方を医師が解説

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メディコレマーク|医師監修済み_2026年3月14日

この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。

📢 このニュースのポイント

  • 脂肪幹細胞を使った再生医療は「再生医療安全性確保法」の規制対象

  • 「自分の細胞だから安全」とは限らない——培養・投与の工程でリスクが生じる可能性がある

  • 厚労省の「再生医療等提供機関検索」で施設の届出・認定状況を確認できる

  • 臨床応用が認められている再生医療はまだ限られており、未認可の施術には慎重な判断が必要

2026年3月13日、厚生労働省は自家脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に外国籍の60代女性が急変し死亡したとして、東京都中央区の「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」と、細胞を製造した株式会社JASCの京都施設に対し、緊急の業務停止命令を出しました。

「再生医療」という言葉は美容・老化・疼痛治療など多くの分野で広がりを見せており、「自分の細胞を使うから安全」と感じる方も多いかもしれません。しかし、今回の事案は再生医療のリスクと規制の現状を改めて考えるきっかけとなっています。

本記事では、今回起きた出来事の詳細を整理するとともに、再生医療とは何か、どのようなリスクがあるのか、受診を検討する際に何を確認すべきかを医師監修のもと解説します。

今回の事案で何が起きたのか

今回の事案で何が起きたのか

2026年3月10日、東京都中央区の「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」において、外国籍の60代女性が慢性の痛みを和らげるため、自家脂肪由来間葉系幹細胞の投与を受けました。

女性は投与中に急変し、救急搬送中に心肺停止状態となりました。その後、搬送先の医療機関で死亡が確認されています。死因は2026年3月13日時点では判明しておらず、再生医療との因果関係も未確定です。

治療に使われた細胞は、株式会社JASCが設置する「JASC京都幹細胞培養センター」(京都市)と、韓国ソウルの「RBio幹細胞培養センター」(韓国RBio Co.)が分担して製造していました。

項目

内容

施術日

2026年3月10日

患者

外国籍・60代女性

施術目的

慢性疼痛(慢性の痛み)の緩和(自由診療)

施術内容

自家脂肪由来間葉系幹細胞を培養し体内に投与

細胞の製造元

株式会社JASCの「JASC京都幹細胞培養センター」(京都市)と韓国RBio Co.の「RBio幹細胞培養センター」(ソウル)が分担製造

経過

投与中に急変→救急搬送中に心肺停止→搬送先で死亡確認

死因・因果関係

死因は現時点で不明(調査中)。再生医療との因果関係も未確定

厚労省の対応

当該クリニック・JASC京都施設に業務一時停止の緊急命令。韓国RBio Co.施設には出荷停止を要請

⚠️ 注意:死因・因果関係はまだ判明していません 厚労省は現時点で「経緯の把握と徹底した原因究明を進める」としており、今回の死亡が再生医療に起因するものかどうかは調査中です。本記事は事実確認済みの情報のみを記載しています。

再生医療安全性確保法|規制の種類

日本では、2014年11月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療安全性確保法)」が施行されました(2025年5月31日に改正法が施行)。この法律は、再生医療が普及する一方でリスク管理が追いつかない状況に対応するため作られました。

同法に基づき、施術を行う医療機関は特定認定再生医療等委員会の審査を受けた上で、厚生労働大臣(地方厚生局)に提供計画を届け出る必要があります。

制度の仕組み

内容

対象

人の細胞を加工して使う医療行為(自家・他家・幹細胞など)

リスク分類

第一種(高リスク)・第二種(中リスク)・第三種(低リスク)の3段階

届出・認定手順

医療機関は①(特定)認定再生医療等委員会の審査を受け、②厚生労働大臣(地方厚生局)に提供計画を届け出る

細胞培養施設

医療機関外の細胞加工施設は「特定細胞加工物製造許可」が、医療機関内(院内)施設は届出が必要

緊急命令権限

死亡・重篤な有害事象が発生した場合、厚生労働省は業務停止等の緊急命令を発出できる

今回の事案では、この緊急命令権限が発動されました。
詳細は厚生労働省の公式ページをご参照ください:再生医療等の安全性の確保等に関する法律について|厚生労働省

再生医療とは|「自分の細胞だから安全」は本当?

再生医療とは|「自分の細胞だから安全」は本当?

再生医療とは、患者自身または他者から採取した細胞を培養・加工して体内に戻すことで、失われた機能を回復させたり病気を治療したりする医療のことです。

代表的なものとして、骨髄移植・皮膚移植(火傷治療)・角膜細胞シート移植などはすでに広く行われています。一方、近年増えている「脂肪由来幹細胞(ADSC)による疼痛・若返り治療」「PRP(多血小板血漿)療法」などは、まだ研究・臨床試験の段階のものも多く含まれます。

「自分の細胞だから安全」という誤解

「自分から採った細胞を使うのだから拒絶反応がなくて安全」という説明を受けることがあります。

しかし、安全性のリスクは主に以下の工程で生じます:

  1. 細胞の採取時(感染・出血リスク)

  2. 培養・加工の工程(菌・ウイルスの混入、細胞の変質)

  3. 投与の経路・量・タイミング(過剰投与・誤投与)

今回の事案でも、複数の施設にまたがる培養工程が含まれていたことが確認されています。

脂肪由来幹細胞(ADSC)治療のリスク

脂肪由来幹細胞(ADSC:Adipose-derived stem cell)を用いた治療は、国内でも多くのクリニックが提供していますが、有効性・安全性が医学的に確立されていないものが多いのが現状です。

リスクの種類

具体的な内容

感染症

細胞培養中に細菌・真菌・ウイルスが混入するリスク

塞栓症

細胞や脂肪粒子が血管に詰まるリスク(肺塞栓など)

腫瘍化

長期的に細胞が異常増殖する可能性(特に幹細胞)。現時点で報告例はないが、観察期間が限られているため長期フォローが必要

効果不明

有効性が科学的に証明されていない治療が多数存在する

費用の問題

健康保険適用外が多く、数十〜数百万円の自費治療となる場合がある

再生医療を受ける前に確認すること

再生医療を受ける前に確認すること

再生医療を受けることを検討している場合は、以下の点を必ず確認することをお勧めします。

確認項目

確認方法・ポイント

届出・認定の有無

厚労省「再生医療等提供機関検索」でクリニック名を確認

細胞培養施設の許可

使用する細胞を製造する施設が特定細胞加工物製造許可を持っているか

治療の根拠

有効性・安全性を示す査読論文・臨床試験データがあるか確認

費用の内訳

総費用・追加費用の有無・保険適用外かどうかを書面で確認

担当医の専門性

再生医療に関する研修・資格・実績を確認

説明と同意

リスク・効果・代替治療についてインフォームドコンセントを受けているか

🔍 厚労省の届出確認

再生医療等提供機関の届出状況は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。

▶️再生医療の提供機関の検索はこちら

よくある質問(FAQ)

Q1. 再生医療はすべて危険なのですか?

いいえ、すべてが危険というわけではありません。骨髄移植・皮膚移植・角膜細胞シート移植など、長年の実績があり安全性・有効性が確立された再生医療は広く行われています。今回問題となったのは、有効性・安全性の根拠が十分に確立されていない段階での施術と、複数施設にまたがる細胞製造工程の管理という点です。

Q2. 「自分の細胞を使う」と言われました。本当に安全ですか?

自家細胞(自分の細胞)を使う場合でも、採取・培養・加工・投与の各工程でリスクが生じる可能性があります。細胞の培養工程で外部からの混入が起きたり、投与量や経路が適切でない場合に副作用が生じたりすることがあります。「自分の細胞だから絶対安全」という説明には注意が必要です。

Q3. 保険が使えますか?

現在、保険適用される再生医療は非常に限られており、多くのクリニックで提供されている幹細胞治療・PRP療法などは自由診療(全額自費)です。費用は施術内容によって数十万〜数百万円になることもあります。

また、脂肪幹細胞(ADSC)治療は、培養した自家体性幹細胞を用いるため「第二種再生医療等」(中リスク)に分類されます。PRP(多血小板血漿)療法は培養なし・相同利用の場合は「第三種再生医療等」(低リスク)に分類されるのが一般的です。いずれも自由診療であっても(特定)認定再生医療等委員会の審査を受けた上での届出が法的に義務付けられており、届出を行わずに実施している施設は法令違反となります。

Q4. 施設の安全性はどこで確認できますか?

厚生労働省の「再生医療等提供機関検索」で、再生医療安全性確保法に基づく届出・認定を受けた施設を検索できます。

再生医療等の安全性の確保に関する取組|厚生労働省

未届出の施設や、届出内容と異なる施術を行っている施設は法令違反となります。

Q5. 今回のクリニックで施術を受けた場合、どうすればよいですか?

同クリニックで施術を受けたことがある方は、かかりつけ医または最寄りの医療機関に相談してください。体調に異変を感じる場合は、速やかに医療機関を受診してください。

まとめ

今回の事案は、再生医療の安全管理の重要性を改めて示すものとなりました。再生医療は確かに期待が大きい分野ですが、現時点では有効性・安全性が確立されていない施術も多く存在します。

再生医療を受診する際には、日本再生医療学会が開設した「再生医療PORTAL」で検索するなど、信頼できる施設の選定が重要です。

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参考文献

※本記事は医師監修のもと作成していますが、個別の医療行為に関する判断を行うものではありません。再生医療に関する疑問や不安がある場合は、担当医師・医療機関にご相談ください。

松澤 宗範
松澤 宗範
(アウラニクリニック統括院長)
医師のコメント

【今回の事案について】
慢性疼痛に対して自家脂肪由来間葉系幹細胞を静脈投与するという治療法は、一部の基礎研究で抗炎症作用や組織修復の可能性が示唆されているものの、慢性疼痛への有効性を確立した大規模臨床試験のエビデンスは現時点で存在しません。日本再生医療学会も2025年3月に、間葉系幹細胞の静脈投与における塞栓症リスクや投与プロトコルに関する安全性指針を発表しており、この治療法自体にリスクが内在することは専門家の間で認識されています。
特に注目すべきは、2025年8月にも同種の治療(慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞の点滴投与)で死亡事故が発生しており、今回が2例目であるという点です。半年余りで同じカテゴリの治療から2件の死亡事案が出ていることは、個別の施設の問題にとどまらず、この治療法そのものの安全管理体制を根本的に見直す必要があることを示唆しています。

【再生医療全般の現状】
再生医療にはすでに臨床で確立された領域と、まだ研究段階にある領域が混在しています。造血幹細胞移植(骨髄移植)、重度熱傷に対する自家培養表皮、角膜上皮幹細胞シート移植などは、長年の実績と十分なエビデンスに基づいて実施されています。
一方で、自由診療として提供されている脂肪由来幹細胞治療の多くは、有効性・安全性ともに質の高い臨床試験で証明されていない段階です。「再生医療」という言葉が持つ先進的なイメージと、実際のエビデンスレベルとの間には大きな乖離があることを認識していただく必要があります。

【施設選びで確認すべき点】
再生医療を検討される場合は、最低限以下を確認してください。

  1. 厚生労働省の「再生医療等提供機関検索」で、その施設が提供計画を届け出ているか確認すること。ただし、届出があるからといって有効性や安全性が国によって保証されているわけではないことを理解してください。

  2. 治療法の有効性を示す査読付き論文や臨床試験データの有無を確認すること。「症例報告」や「患者の声」ではなく、対照群を設けた臨床研究レベルのエビデンスがあるかどうかが判断基準です。

  3. 担当医師が再生医療認定医等の資格を持ち、常勤で診療にあたっているかを確認すること。投与時の急変に対応できる救急体制が整っているかも重要です。
    第四に、治療の限界やリスクについて十分な説明を受けること。「自分の細胞だから安全」「副作用はほとんどない」といった断定的な説明をする施設は避けるべきです。

医師のコメント

【今回の事案について】
慢性疼痛に対して自家脂肪由来間葉系幹細胞を静脈投与するという治療法は、一部の基礎研究で抗炎症作用や組織修復の可能性が示唆されているものの、慢性疼痛への有効性を確立した大規模臨床試験のエビデンスは現時点で存在しません。日本再生医療学会も2025年3月に、間葉系幹細胞の静脈投与における塞栓症リスクや投与プロトコルに関する安全性指針を発表しており、この治療法自体にリスクが内在することは専門家の間で認識されています。
特に注目すべきは、2025年8月にも同種の治療(慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞の点滴投与)で死亡事故が発生しており、今回が2例目であるという点です。半年余りで同じカテゴリの治療から2件の死亡事案が出ていることは、個別の施設の問題にとどまらず、この治療法そのものの安全管理体制を根本的に見直す必要があることを示唆しています。

【再生医療全般の現状】
再生医療にはすでに臨床で確立された領域と、まだ研究段階にある領域が混在しています。造血幹細胞移植(骨髄移植)、重度熱傷に対する自家培養表皮、角膜上皮幹細胞シート移植などは、長年の実績と十分なエビデンスに基づいて実施されています。
一方で、自由診療として提供されている脂肪由来幹細胞治療の多くは、有効性・安全性ともに質の高い臨床試験で証明されていない段階です。「再生医療」という言葉が持つ先進的なイメージと、実際のエビデンスレベルとの間には大きな乖離があることを認識していただく必要があります。

【施設選びで確認すべき点】
再生医療を検討される場合は、最低限以下を確認してください。

  1. 厚生労働省の「再生医療等提供機関検索」で、その施設が提供計画を届け出ているか確認すること。ただし、届出があるからといって有効性や安全性が国によって保証されているわけではないことを理解してください。

  2. 治療法の有効性を示す査読付き論文や臨床試験データの有無を確認すること。「症例報告」や「患者の声」ではなく、対照群を設けた臨床研究レベルのエビデンスがあるかどうかが判断基準です。

  3. 担当医師が再生医療認定医等の資格を持ち、常勤で診療にあたっているかを確認すること。投与時の急変に対応できる救急体制が整っているかも重要です。
    第四に、治療の限界やリスクについて十分な説明を受けること。「自分の細胞だから安全」「副作用はほとんどない」といった断定的な説明をする施設は避けるべきです。

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