
この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。
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花粉シーズン真っ只中の2026年3月、「抹茶がくしゃみを減らす」というニュースがSNSで大きな話題になりました。「本当に抹茶で花粉症が楽になるの?」「どんな仕組みなの?」という声が多く上がっています。
この研究は広島大学が2026年3月5日にNature系学術誌『npj Science of Food』に発表した論文に基づくものです。査読は通過済みですが、現時点では最終編集前の早期公開版(アンエディテッド版)であり、最終出版時に細部が変更される可能性があります。研究が注目を集めているのは、既存の抗アレルギー薬とは全く異なるメカニズムでくしゃみを抑制した可能性を示したからです。
本記事では、論文・プレスリリースの内容を正確に読み解きながら、耳鼻科専門医の監修のもと「何がわかって、何がまだわかっていないか」を丁寧に解説します。
広島大学の研究|何がわかったのか

研究チームはアレルギー性鼻炎を発症するよう処置したマウスを対象に実験を行いました。マウスには5週間以上にわたって週2〜3回、抹茶を投与し、さらにアレルゲン(卵白アルブミン/OVA)曝露の30分前にも抹茶を与えました。その後、OVA曝露やヒスタミン投与によってくしゃみ反応がどう変化するかを観察しました。なお実験に使用したアレルゲンは卵白アルブミンであり、花粉そのものを用いた実験ではありません。
主な発見①|くしゃみが明確に減少
抹茶を投与したマウスでは、抹茶なしのマウスと比べてくしゃみの回数が明確に少なくなりました。この結果自体はこれまでのお茶とアレルギーに関する研究とも方向性が一致しています。
主な発見②|免疫系に変化なし ※最大の注目点
最も重要な発見は「なぜくしゃみが減ったか」というメカニズムです。炎症細胞の集積、総IgEおよびアレルゲン特異的IgE産生、腸内細菌叢の多様性には、抹茶投与による有意な変化が見られませんでした。なおエタノール抽出の抹茶ではCD4+T細胞の増殖がわずかに増強されましたが、今回の主実験(お湯抽出)では免疫系への主要な影響は認められませんでした。
つまり抹茶は「免疫反応そのものを抑えてくしゃみを減らしたのではない」ということです。既存の抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬など)とは根本的に異なるアプローチです。
主な発見③|脳幹の神経活動を抑制
研究チームが着目したのは「くしゃみ反射の経路」です。くしゃみは鼻の神経が刺激されると、その情報が脳幹の三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C: ventral spinal trigeminal nucleus caudalis)へ伝わり、反射的に起きます。このSp5Cがくしゃみ反射の中枢として機能していると考えられています。
研究では神経活動の指標として「c-Fos遺伝子」の発現量を測定しました。c-Fosは神経細胞が強く興奮したときに発現が増える「神経活動のマーカー」です。ヒスタミンを鼻に投与するとc-Fosの発現が増加(=くしゃみ中枢が活性化)しましたが、抹茶を投与したマウスではこのc-Fosの増加がほぼ正常レベルまで抑制されていました。
神沼教授は「抹茶を経口摂取することで、免疫反応を変えずにくしゃみ反射に関連する脳幹の神経活動を強く抑制した」と説明しています(広島大学プレスリリース)。
従来の花粉症治療との違い|「くしゃみのスイッチ」を直接切る?

アレルギー性鼻炎の現在の治療
花粉症(アレルギー性鼻炎)の治療薬の多くは、IgEやヒスタミンなど免疫系のシグナルをブロックすることでくしゃみや鼻水を抑えます。たとえば抗ヒスタミン薬はヒスタミンの受容体をブロックし、鼻腔粘膜での炎症反応を抑えます。今回の広島大学の研究はこれとは全く異なる神経系へのアプローチを示しています。
アプローチ | 既存の抗アレルギー薬 | 今回の抹茶研究が示した可能性 |
|---|---|---|
作用部位 | 免疫系(IgE・ヒスタミン受容体など) | 脳幹のくしゃみ反射中枢(神経系) |
IgEへの影響 | あり(ブロック) | なし(変化なし) |
マスト細胞への影響 | あり | なし(お湯抽出では不変) |
T細胞への影響 | あり(一部) | お湯抽出では不変(エタノール抽出ではわずかに増強) |
腸内細菌叢への影響 | 薬により異なる | 変化なし |
主な副作用 | 眠気・口渇など | 現時点では不明(マウス実験段階) |
エビデンスレベル | ヒト臨床試験あり | マウス実験のみ(ヒト試験未実施) |
今回の研究が示唆するのは、免疫系とは別に「くしゃみ反射の神経回路そのものを抑制する」という新しいアプローチの可能性です。論文の責任著者の神沼教授は、これを「くしゃみのスイッチを切る」メカニズムと表現し、眠気などの副作用がない新しいアレルギー対策につながる可能性として期待を示しています。
この研究の限界|「抹茶で花粉症が治る」は早計
⚠️ 重要な留意点 |
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マウスとヒトの違い
動物実験の結果がそのままヒトに当てはまるとは限りません。アレルギー反応の複雑さ、脳幹の神経回路の構造、抹茶の吸収・代謝プロセスはヒトとマウスで異なります。
有効成分が特定されていない
今回の研究では、抹茶に含まれる多くの成分(カテキン・テアニン・クロロフィル・カフェインなど)のうち、どの成分が神経活動の抑制に関与しているかはまだ特定されていません。成分の特定と作用機序の詳細な解明が今後の課題です。
投与量・摂取方法が不明
実験でのマウスへの投与量と方法が、ヒトが日常的にお茶を飲む状況と同等かどうかも現段階では不明です。
研究者自身の評価
論文の責任著者の神沼教授自身も「次のステップはヒトでも同様の効果が起きるかどうかの研究だ。目標はアレルギー性鼻炎症状の標準的なケアを補完する、エビデンスに基づいた食品ベースの選択肢を見つけることだ」と述べており(広島大学プレスリリース)、あくまで将来の可能性を示した段階であることを強調しています。
抹茶に含まれる成分|なぜ神経系に影響する可能性があるのか
抹茶は普通の緑茶と異なり、茶葉をまるごと粉末にしたものです。一般的な緑茶の浸出液と比べて多くの成分を摂取できます。神経系への影響に関して研究されている主な成分は以下の通りです。
成分 | 特徴 | 神経系との関連 |
|---|---|---|
L-テアニン | 抹茶に豊富なアミノ酸 | リラックス効果・神経活動の調整に関与するとされる |
カテキン(EGCG等) | 強力な抗酸化物質 | 抗炎症作用・神経保護作用が研究されている |
クロロフィル | 抹茶の緑色の素 | 抗炎症作用が示唆されているが神経系への作用は研究途上 |
カフェイン | 覚醒作用のある成分 | 神経系に作用するが、今回のくしゃみ抑制との関連は不明 |
ただし重要なのは、今回の研究では「抹茶全体」として評価されており、どの成分が主役なのかは現時点で特定されていない点です。
抹茶の日常摂取ノウハウ|研究を踏まえた現実的な活用

今回の研究は食品としての抹茶に注目したものです。現時点でヒトへの効果は未確認ですが、抹茶はもともと健康的な飲み物として広く認知されており、通常の食事として取り入れること自体に問題はありません。
抹茶を取り入れる際のポイント
抹茶は緑茶よりもカテキン・テアニンを豊富に含む。1日1〜2杯(約2〜4g程度)が一般的な摂取量の目安
カフェインも含まれるため、就寝前の大量摂取は避ける
抹茶ラテ・抹茶スイーツなど食品として楽しむことは問題ないが、砂糖・乳脂肪の過剰摂取には注意
あくまで「食品」であり、花粉症の薬として自己判断で治療を中断・変更しないこと
重度のアレルギー症状がある場合は必ず医療機関を受診すること
⚠️ 注意 |
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本研究はマウス実験の結果です。現時点では「抹茶を飲めば花粉症の症状が緩和される」とは言えません。抗アレルギー薬の服用や免疫療法を自己判断で中止・変更しないでください。 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 抹茶を飲めば花粉症のくしゃみが止まりますか?
現時点ではそのような結論は出ていません。今回の研究はマウス実験であり、ヒトで同様の効果が得られるかは未確認です。抹茶は健康的な飲み物ですが、医薬品の代わりにはなりません。
Q2. どんな成分がくしゃみを抑えたのですか?
今回の研究では抹茶全体として評価されており、どの成分が神経活動の抑制に関与しているかは特定されていません。L-テアニン・EGCG(カテキン)などが候補として考えられますが、今後の研究が必要です。
Q3. 普通の緑茶でも同じ効果がありますか?
今回の研究は「抹茶」を用いたものです。普通の緑茶との比較は行われていません。抹茶は茶葉をまるごと粉末にするため、一般的に浸出液として飲む緑茶よりもカテキン・テアニンなどを多く含みますが、普通の緑茶に同様の効果があるかどうかは現時点では不明です。
Q4. 花粉症の薬を飲んでいますが、抹茶と一緒に摂っても大丈夫ですか?
抹茶は一般的な食品であり、通常の量を飲む分には多くの薬との相互作用は報告されていません。ただし抹茶にはカフェインが含まれるため、カフェイン感受性が高い方や特定の薬を服用中の方は医師・薬剤師にご確認ください。
Q5. この研究はどこに掲載されていますか?
Nature Portfolioが発行する食品科学の学術誌「npj Science of Food」に2026年3月5日付でオープンアクセス論文として掲載されています(DOI: 10.1038/s41538-026-00777-9)。どなたでも無料で全文を閲覧できます。
まとめ
広島大学の研究は、抹茶が免疫系を介さずに脳幹のくしゃみ反射中枢の神経活動を抑制する可能性を示した点で、科学的に非常に興味深い成果です。
発見:抹茶投与マウスでくしゃみが減少、免疫系への影響なし、脳幹の神経活動(c-Fos発現)が抑制された
意義:免疫系と神経系という「二本立て」のアプローチで花粉症を考える新しい視点を提供
限界:マウス実験のみ、有効成分・投与量未特定、ヒト試験未実施
今後:ヒトを対象とした臨床研究が次のステップ
「抹茶を飲めば花粉症が治る」という段階ではありませんが、食品由来の成分が従来の薬とは異なるメカニズムでアレルギー症状に関与できる可能性を示した研究として、今後のヒト試験の結果に注目です。
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