
この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。
💡 この記事でわかること |
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「頭が痛いけど、市販薬を飲めばいい…」と我慢していませんか?1997年の全国調査では、日本における片頭痛の年間有病率は約8.4%(男性3.6%、女性12.9%)と報告されており(Sakai & Igarashi, Cephalalgia, 1997)、現在も頭痛の診療ガイドライン2021に引用されている代表的な数値です。にもかかわらず、片頭痛患者の80%以上は医療機関での治療を受けていないのが現状です(坂井ら、The Journal of Headache and Pain 2022年)。
片頭痛は「ただの頭痛」ではありません。適切な診断と治療によってコントロールできる神経疾患です。近年はCGRP関連薬剤や2025年発売の経口新薬「ナルティーク」など治療の選択肢が大幅に広がりました。
本記事では、日本頭痛学会理事で専門医委員会委員長を務めている辰元宗人先生の監修のもと、片頭痛の症状・原因・診断基準・最新治療・費用まで詳しく解説します。
片頭痛とは

片頭痛は、頭の片側(または両側)にズキンズキンと脈打つような痛みが繰り返し生じる神経疾患です。「片側が痛む」という名称ですが、実際には約4割の患者で両側に痛みが現れます。
日本における有病率は、1997年の全国調査(Sakai & Igarashi, Cephalalgia, 1997)では約8.4%(男性3.6%、女性12.9%)と報告されており、頭痛の診療ガイドライン2021でも引用されている代表的な数値です。なお、調査方法の違いにより推計値は研究によって異なります(2022年の別の国内研究では約3.2%の報告もあります)。女性は男性の約3〜4倍多く発症すると報告されており、特に20〜40代の働き盛り・子育て世代の女性に多く見られます。
片頭痛は世界疾病負荷研究(GBD 2016)において、50歳未満の女性では障害度第1位に挙げられるほど生活への影響が深刻です。にもかかわらず、日本では患者の80%以上が医療機関を受診しておらず、多くの人が市販薬でやり過ごしているのが現状です。
片頭痛の症状
片頭痛の発作は大きく「予兆→(前兆)→頭痛→回復」の4段階で進みます。
① 予兆(頭痛の数時間〜1日前)
頭痛が始まる前に、眠気・気分の変調・肩や首のこり・食欲の変化などが現れることがあります。これは「前兆」とは別物で「予兆」と呼ばれます。予兆に気づいてトリガーを避けたり早めに薬を準備したりすることが重要です。
② 前兆(頭痛の5〜60分前・約2〜3割の患者に現れる)
片頭痛患者の約2〜3割に現れるのが「前兆」です。最も多いのは「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる視覚的前兆で、視界にキラキラ・ギザギザした光が現れ、見えにくくなります。通常は60分以内に消え、その後に頭痛が始まります。
③ 頭痛発作(4〜72時間持続)
片頭痛発作の代表的な症状は以下の通りです。
ズキンズキンと脈打つような拍動性の痛み
中等度〜重度の強さで日常生活に支障が出る
歩行や階段の昇降など日常動作で痛みが増悪する
吐き気・嘔吐を伴うことが多い
光・音・におい過敏(普段は気にならない刺激が不快になる)
安静にしたい・暗い場所にいたい
発作は4〜72時間継続し、何もしなければ長時間苦しみが続きます。早めの治療開始が回復のカギです。
④ 回復期
頭痛が落ち着いた後も、疲労感・集中力の低下・気分の変化などが数時間〜1日程度残ることがあります。
片頭痛と混同されやすい頭痛との違い
比較項目 | 片頭痛 | 緊張型頭痛 | 危険な頭痛(二次性) |
|---|---|---|---|
痛みの性質 | ズキズキ・拍動性 | 締め付けられる感じ | 突然の激しい痛み |
痛む場所 | 片側(両側のことも) | 後頭部〜両側 | 様々 |
持続時間 | 4〜72時間 | 30分〜7日 | 急速に悪化 |
随伴症状 | 吐き気・光過敏など | ほぼなし | 発熱・意識障害など |
動くと | 悪化する | 変わらないことが多い | — |
受診の目安 | 繰り返す場合は神経内科へ | 続く場合は受診を | すぐに救急受診 |
「いつもと違う頭痛」「人生最悪の頭痛」「突然バットで殴られたような頭痛」は脳出血・くも膜下出血などの危険な二次性頭痛の可能性があります。このような場合はすぐに救急受診してください。
片頭痛の診断基準(ICHD-3)

片頭痛の診断は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の基準に基づいて行われます。「前兆のない片頭痛」の診断基準は以下の通りです。
A. 以下のB〜Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B. 頭痛発作の持続時間が4〜72時間(未治療または治療が無効の場合)
C. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
片側性
拍動性
中等度〜重度の頭痛
日常的な動作(歩行・階段昇降など)により頭痛が増悪する、またはそれらを避ける
D. 頭痛発作中に以下の少なくとも1項目を満たす
悪心または嘔吐(あるいは両方)
光過敏および音過敏
E. ほかに適切なICHD-3の診断がない
出典:国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版(日本頭痛学会)
片頭痛が起こるメカニズム
片頭痛のメカニズムはいまだ完全には解明されていませんが、現在最も有力とされているのが「三叉神経血管説」です。
脳神経の一つである三叉神経が活性化されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質が放出されます。CGRPは血管を拡張させ、炎症を引き起こし、痛みの信号を脳に伝達します。これが片頭痛発作の中心的な仕組みと考えられています。
このCGRPの発見が、後述するCGRP標的薬という革新的な治療薬の開発につながりました。片頭痛は「脳の病気」であり、適切な医療を受けることで改善できます。
片頭痛のトリガー(誘発因子)
片頭痛は様々なトリガーが引き金となって発症します。自分のトリガーを知り、できるだけ避けることが重要です。
カテゴリー | 代表的なトリガー |
|---|---|
精神的要因 | ストレス、過緊張、緊張からの解放(週末頭痛) |
身体的要因 | 睡眠不足、寝すぎ、疲労、空腹、脱水 |
食事・飲み物 | アルコール(特に赤ワイン)、チョコレート、チーズ、カフェイン(過剰摂取や急な中断) |
環境要因 | 気圧・天候の変化、強い光、騒音、強いにおい |
ホルモン要因 | 月経、排卵、ホルモン変動(女性に多い理由の一つ) |
その他 | 旅行・時差、姿勢、長時間のスマートフォン・PC使用 |
「頭痛ダイアリー」をつけることで自分のトリガーを特定しやすくなります。スマートフォンアプリを活用するとより簡単に記録できます(後述)。
片頭痛の治療法

片頭痛の治療は大きく「急性期治療(発作を速やかに抑える)」と「予防療法(発作を起こりにくくする)」の2種類に分かれます。多くの場合、両方を組み合わせて治療します。
① 急性期治療
発作が起きたときに服用する薬です。早ければ早いほど効果が高く、痛みが軽いうちに服用することが重要です。
【鎮痛剤(アスピリン・イブプロフェン・アセトアミノフェンなど)】
軽度〜中等度の片頭痛に使用します。市販薬でも入手できますが、月に15日以上の服用が3か月を超えると「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」を引き起こすリスクがあるため注意が必要です(日本頭痛学会・頭痛の診療ガイドライン2021)。
【トリプタン製剤】
片頭痛のために開発された特異的治療薬で、CGRPの放出を抑制し血管収縮作用により片頭痛発作を抑えます。中等度〜重度の発作に特に有効です。スマトリプタン(イミグラン)・エレトリプタン(レルパックス)など複数の種類があります。
費用目安(3割負担):1錠あたり約20~140円
注意:狭心症・脳卒中既往がある方は使用できない場合があります
【ゲパント(経口CGRP受容体拮抗薬)】
2025年12月16日、日本で初めてCGRP受容体を標的とした経口薬「ナルティークOD錠75mg(リメゲパント)」が発売されました。急性期治療と予防の両方に使用できる初の経口薬で、トリプタンが使えない方や効果が不十分だった方にも新たな選択肢となります。
ナルティーク(リメゲパント):2025年9月承認・11月薬価収載・12月発売
心血管疾患リスクが懸念される方でも使用しやすい
費用は保険適用されますが、詳細は医療機関に確認してください
② 予防療法
月に2回以上の発作、または日常生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合に予防療法を検討します。頭痛がない日も毎日服用することで発作頻度・重症度を下げます。
【CGRP関連抗体薬(注射薬)】
片頭痛のメカニズムに直接働きかける最も新しいクラスの予防薬です。2021年に日本で3剤が承認・発売されました。月に1回の皮下注射で発作頻度を大幅に減らす効果があります。
製品名 | 一般名 | 投与間隔 | 費用目安(3割負担) |
|---|---|---|---|
エムガルティ | ガルカネズマブ | 月1回(初回2本) | 約1万3,000円/本 |
アジョビ | フレマネズマブ | 月1回または3ヶ月1回 | 約1万2,000円/本 |
アイモビーグ | エレヌマブ | 月1回 | 約1万2,000円/本 |
【内服予防薬】
以前から使われている予防薬として、以下のものがあります。効果が出るまで2〜3ヶ月かかることがあります。
ロメリジン(カルシウム拮抗薬)
バルプロ酸(抗てんかん薬)
アミトリプチリン(抗うつ薬)
プロプラノロール(β遮断薬)
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)(MOH)に注意
片頭痛の落とし穴として「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)(Medication Overuse Headache: MOH)」があります。日本頭痛学会のガイドライン(ICHD-3)によると、トリプタン・複合鎮痛薬・エルゴタミンは月10日以上、単純鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェンなど)は月15日以上の服用が3か月を超えると、逆に頭痛が悪化・慢性化してしまいます。
「痛みが怖いから早めに飲む」「頭痛がないときも予防で飲む」という習慣が薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)につながります。月に頭痛薬を10日以上使っている方は、一度頭痛専門医に相談することをおすすめします。
受診先と費用の目安
何科を受診すればいい?

片頭痛が疑われる場合は「頭痛外来」「脳神経内科」「脳神経外科」を受診しましょう。「頭痛専門医」の資格を持つ医師のいるクリニックがあれば最適です。かかりつけ医に相談して紹介してもらうことも可能です。
費用の目安(3割負担の場合)
内容 | 初診 | 再診 |
|---|---|---|
診察のみ(検査なし) | 約2,000〜3,000円 | 約1,000〜1,500円 |
MRI・CT検査あり | 約5,000〜1万円 | — |
トリプタン(1錠) | 約20~140円 | — |
CGRP抗体薬(月1回) | 約1万2,000~1万3,000円 | — |
ナルティーク(1錠) | 保険適用(詳細は医療機関へ) | — |
日常生活での対処法・セルフケア
発作が起きたとき
暗く静かな場所で安静にする
痛む部位を冷やす(人によっては温めると楽になる場合も)
早めに適切な薬を服用する(ためらわず早期服用が効果的)
入浴・激しい運動は避ける(血管拡張で悪化しやすい)
日常的な予防のために
規則正しい睡眠・食事・水分摂取を心がける
自分のトリガーを把握し避ける
過度なストレスを避け、適度な運動を習慣化する
カフェインの急な中断を避ける
頭痛ダイアリーで発作の記録をつける
頭痛ダイアリー・アプリの活用
頭痛の日時・強さ・持続時間・服薬状況・トリガーを記録する「頭痛ダイアリー」は、自分の片頭痛パターンを把握し、医師への情報提供にも役立ちます。
スマートフォンアプリを使うと毎日の記録が簡単になります。メディコレWEBで監修に携わる辰元宗人先生は、片頭痛のセルフケアをサポートするアプリ「ヘッテッテ」の開発にも携わっており、日常管理ツールの活用を推奨しています(詳しくは後述の辰元先生インタビューをご覧ください)。
片頭痛と光過敏・生活環境の工夫
片頭痛患者の多くが光に敏感な「光過敏」を経験します。片頭痛の研究を続けてきた辰元先生は、照明の色が片頭痛に影響することを外来で発見しました。
白色のシーリングライトよりも電球色の照明の方が片頭痛患者の症状が軽減されたという臨床経験から、片頭痛の光過敏に関する研究を進めてきました。自宅や職場の照明を見直すことが、薬以外のセルフケアとして有効な場合があります。
白色蛍光灯・LEDより電球色が片頭痛には刺激が少ない傾向がある
スクリーンの輝度を下げる・ブルーライトカットフィルムを使う
サングラス・光過敏用の特殊レンズの活用
外出時は帽子やサングラスで直射日光を避ける
よくある質問(FAQ)
Q. 片頭痛は完治しますか?
現時点では片頭痛を根本的に完治させる治療法はありません。しかし、適切な治療と生活習慣の改善によって、発作の頻度・強さをコントロールし、日常生活への影響を大幅に減らすことができます。閉経後に自然軽快する女性も多くいます。
Q. 子どもや妊娠中でも片頭痛の薬を飲めますか?
子どもへのトリプタン使用は年齢制限があります。妊娠中はほとんどの頭痛薬の使用が制限されます。いずれも必ず主治医・産婦人科医に相談した上で対処法を決めてください。
Q. 市販薬でコントロールしているので受診は不要ですか?
月に数回以上市販薬を使っている場合は受診をおすすめします。処方薬(特にトリプタンやCGRP抗体薬)の方が効果が高く、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)のリスクも管理できます。また月10日以上の服薬は薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の危険サインです。
Q. トリプタンと市販の鎮痛剤はどう使い分ければいいですか?
軽度の発作には市販の鎮痛剤が有効な場合があります。中等度〜重度の発作や、鎮痛剤が効かないときはトリプタンが適しています。最適な使い分けは担当医と相談して決めましょう。
Q. 頭痛専門医はどうやって探せばいいですか?
日本頭痛学会のホームページ(jhsnet.net)で「頭痛専門医」の検索ができます。頭痛外来・脳神経内科・脳神経外科のある医療機関を受診することをおすすめします。
監修医師・辰元宗人先生からのメッセージ
辰元先生は獨協医科大学で長年、片頭痛の臨床・研究に携わってきました。外来で「照明を電球色に変えただけで頭痛が良くなった」という患者さんの体験から、薬だけでなく生活環境の改善も片頭痛ケアに重要であることを研究で示してきました。
2024年には、その知見を多くの片頭痛患者に届けるため、キヤノンマーケティングジャパン株式会社に転職し、頭痛セルフケアサポートアプリ「ヘッテッテ」の開発・普及に取り組んでいます。
「片頭痛患者が、幸せに過ごせる環境を作りたい」という辰元先生の思いや、片頭痛研究・アプリ開発への取り組みは、以下のインタビュー記事で詳しくご覧いただけます。
▶ 辰元宗人先生インタビュー「片頭痛患者が、幸せに過ごせる環境を作りたい」
まとめ
片頭痛は1997年の全国調査で有病率約8.4%と報告された身近な神経疾患ですが、適切な治療でコントロールできる病気です。2021年のCGRP抗体薬に加え、2025年12月には急性期治療と予防の両方に使える経口薬「ナルティーク」が日本でも発売されるなど、治療の選択肢が急速に広がっています。
まずは自分のトリガーを知ること、頭痛ダイアリーで記録をつけること、そして月に2回以上の発作がある場合は神経内科・頭痛外来を受診することをおすすめします。我慢せずに専門医に相談することが、より良い日常生活への第一歩です。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。
メディア運営者の方へ
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