
この記事はメディコレWEBを通じた医師監修を受けています。
💡 この記事でわかること |
|---|
|
「健康診断でγ-GTPやALTが高いと言われた」「脂肪肝と指摘されたけど症状がないし大丈夫だろう」と放置していませんか?
脂肪肝は成人の約9〜30%(1,000万人以上)が該当するとも言われる一般的な状態ですが(日本消化器病学会 NAFLD/NASHガイドライン2020)、放置すると肝炎・肝硬変・肝がんという深刻な病気に進行する危険があります。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、かなり進行するまで自覚症状がほとんど現れません。だからこそ健康診断での指摘を軽視せず、早めに対処することが重要です。本記事では脂肪肝の原因・種類・検査値の見方・放置した場合のリスク・食事・運動による改善法まで消化器内科医が詳しく解説します。
脂肪肝とは

脂肪肝とは、肝細胞の30%以上に脂肪(主に中性脂肪)が蓄積した状態のことをいいます。健康な肝臓にも約5%程度の脂肪は含まれていますが、これが過剰になった状態が脂肪肝です。
肝臓は摂取した栄養を代謝・貯蔵する臓器ですが、エネルギーの摂取過多や代謝異常が続くと余分な脂肪が肝臓に溜まっていきます。成人の約9〜30%(患者数1,000万人以上)が脂肪肝に該当するとも推計されており(日本消化器病学会 NAFLD/NASHガイドライン2020)、肥満の人だけでなく標準体重の人にも起こります。
脂肪肝の種類
脂肪肝は大きく2種類に分けられます。
① アルコール性脂肪肝
過度な飲酒が原因で起こる脂肪肝です。アルコールが肝臓で分解される際に中性脂肪が合成されやすくなります。日本酒3合以上・ビール大びん3本以上の飲酒が習慣化している方に多く見られます。
禁酒・節酒により比較的早期に改善できますが、飲酒を続けると「アルコール性肝炎→肝硬変→肝がん」へと進行するリスクがあります。
② 代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD/MASH)
飲酒量が少ない(または全く飲まない)人に起こる、肥満や糖尿病などの「代謝異常」を伴う脂肪肝です。日本ではこのタイプの脂肪肝が増加しており、肥満人口の増加が主な背景にあります。
近年、このタイプの脂肪肝は「MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)」と新しく定義されました。MASLDという枠組みのなかには、初期の軽症な状態から進行した重症型までが含まれており、状態によって大きく以下の2つに区別されます。
飲酒をほとんどしない人にも起こる脂肪肝です。日本では非アルコール性脂肪肝が増加しており、肥満人口の増加が主な背景にあります。
分類 | 特徴 |
|---|---|
MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患) ※旧称NAFLD | 脂肪肝全体の総称。多くは生活習慣の改善で治る |
MASH(代謝異常関連脂肪肝炎) ※旧称NASH | MASLDの中で炎症や線維化を伴う重症型。肝硬変・肝がんに進行するリスクがある |
MASLDの約10〜20%がMASHに進展すると言われており(旧称:NAFLD/NASH)、MASHになると生活習慣の改善(減量・食事・運動療法)が最も大切です。MASHに対する保険適応の特異的な治療薬はほぼ無いため、生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧)の治療薬を併用し、肝機能の改善を期待します。
※薬剤や極端なダイエットによるものは二次性脂肪肝と呼ばれ、MASLDとは区別されます。
脂肪肝の原因
アルコール性の主な原因
習慣的な多量飲酒(純アルコール量60g/日以上が目安)
非アルコール性の主な原因
過食・高カロリー食(特に糖質・脂質の過剰摂取)
肥満・メタボリックシンドローム
糖尿病・インスリン抵抗性
脂質異常症(中性脂肪が高い)
運動不足
痩せている方でも「隠れ脂肪肝」になるケースがあります。特に内臓脂肪が多い方・糖尿病の方は注意が必要です。
脂肪肝の症状
脂肪肝の最大の特徴は、初期〜中期にかけて自覚症状がほぼないことです。
初期:ほぼ無症状。健康診断でのみ発見されることが多い
進行時(肝炎・肝硬変移行後):倦怠感・食欲不振・右上腹部の違和感・黄疸・むくみ・腹水
症状が出た時にはすでに肝炎・肝硬変へ進行しているケースも多く、「症状がないから安心」は禁物です。
脂肪肝の検査と診断

検査と診断の注意点
⚠️ 肝機能が「正常」でも脂肪肝の可能性
脂肪肝の検査において最も誤解されやすいのが、「血液検査で肝機能(AST、ALT、γ-GTPなど)の数値が正常なら、脂肪肝ではない」という思い込みです。
実は、肝臓に脂肪が蓄積しているだけの段階では、肝機能の数値は正常値を示します。数値に異常が現れるのは、放置して「脂肪肝炎(MASH)」へと悪化し、肝臓の細胞が壊れ始めてからです。そのため、「血液検査の肝機能が正常だから大丈夫」と安心するのは危険です。
⚠️ MASLDの診断で重視されるのは「代謝異常」
最新の「MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)」の診断基準においても、肝機能の数値の異常は基準に含まれていません。超音波(エコー)検査などで肝臓の脂肪を確認することに加え、「肥満」「高血糖」「高血圧」「脂質異常」といった心血管疾患のリスクとなる代謝異常があるかどうかが診断の決め手となります。
脂肪肝は主に以下の検査で発見・評価されます。
検査方法
血液検査(肝機能検査)
検査項目 | 基準値目安 | 脂肪肝との関連 |
|---|---|---|
ALT(GPT) | 男性30以下・女性19以下(U/L) | 肝細胞障害の指標。脂肪肝で上昇しやすい |
AST(GOT) | 30以下(U/L) | ALTとともに上昇。アルコール性ではAST>ALTのことが多い |
γ-GTP | 男性50以下・女性30以下(U/L) | 飲酒・脂肪肝で上昇。アルコール性の指標として有用 |
中性脂肪(TG) | 150未満(mg/dL) | インスリン抵抗性を反映して上昇し、肝臓への脂肪蓄積を促進する。 |
血糖・HbA1c | 空腹時血糖 100未満 (mg/dL) かつ HbA1c 5.7未満 (%) | すでに糖尿病(空腹時126以上等)であればそれだけで要件を満たし、糖尿病に至らなくとも上記基準値を超えれば代謝異常のリスク因子と判定される |
※基準値は検査機関によって異なります。数値の解釈は担当医に確認してください。
画像検査
腹部超音波(エコー)検査:脂肪肝の第一選択。肝臓が「明るく」見える(bright liver)特徴がある。費用は3割負担で約2,000〜3,000円
腹部CT:脂肪肝の程度と他の疾患の鑑別に有用
MRI(MRエラストグラフィー):肝臓の線維化(硬さ)を非侵襲的に評価できる
肝生検
MASHか否かの確定診断や線維化の評価には肝生検(肝臓の組織を採取する検査)が必要なことがあります。担当医の判断のもとで実施されます。(近年はFIB-4 indexやM2BPGi、フィブロスキャン等の非侵襲的検査が普及し、肝生検の適応は限定的になりつつあります。)
脂肪肝を放置するとどうなる?
脂肪肝は適切に対処すれば改善できる状態ですが、放置すると以下のように進行するリスクがあります。
進行段階 | 状態・リスク |
|---|---|
脂肪肝(初期) | ほぼ無症状。生活習慣改善で回復可能 |
脂肪肝炎(MASH) | 炎症・線維化が進行。倦怠感が出ることも。薬物療法が必要なケースあり |
肝硬変 | 肝臓が硬くなり機能が著しく低下。腹水・黄疸・食道静脈瘤など重篤な合併症 |
肝細胞癌 | 肝硬変から肝がんに移行するリスクが高まる。5年生存率が低い |
心血管疾患 | 狭心症・心筋梗塞リスクの上昇。メタボリックシンドロームとの関連 |
MASLDから肝硬変への移行には10〜20年かかることが多いですが、MASHになると進行が速まります。また、脂肪肝がある方は糖尿病・高血圧・心疾患のリスクも高い傾向があります。
脂肪肝の改善方法

脂肪肝の治療の基本は生活習慣の改善です。原因に応じた対策をとることで、多くの場合は改善が期待できます。
① アルコール性脂肪肝の場合
禁酒が最も効果的。禁酒後6〜8週間程度で脂肪肝が改善される
睡眠不足・疲労の蓄積を避ける(内臓機能が低下し肝臓への負荷が増える)
② 非アルコール性脂肪肝の場合
食事改善
総カロリーを適正範囲に抑える(目安:標準体重×25〜30kcal※肥満の程度や年齢によって目標値は異なるため、医師や管理栄養士に相談してください)
糖質の過剰摂取を避ける(菓子・清涼飲料・白米の食べすぎに注意)
食物繊維(野菜・きのこ・海藻)を積極的に摂る
魚・大豆製品など良質なたんぱく質を取り入れる
脂質の中でもオメガ3脂肪酸(青魚・えごま油など)は肝臓の炎症を抑える効果が期待される
コーヒーには脂肪肝・肝炎の予防効果を示す研究報告がある(過度な摂取は不可)
運動
有酸素運動(ウォーキング・水泳・サイクリング)を週3〜5回・1回30分以上を目標に
体重が7%減少すると非アルコール性脂肪肝炎(MASH)が改善されるという研究報告がある。さらに10%以上の減量で、線維化も改善するという報告がある
筋トレ(レジスタンス運動)との組み合わせが肝機能改善に有効
③ 薬剤が原因の場合
原因薬剤を中止または変更する(必ず処方医に相談してください。自己判断での中止は禁止)
いつ医療機関を受診すべきか
以下に当てはまる場合は早めに消化器内科・内科を受診してください。
健康診断でALT・AST・γ-GTPの異常を指摘された
腹部超音波で脂肪肝と診断された
糖尿病・脂質異常症・高血圧と脂肪肝を併発している
体重を減らしても肝機能数値が改善しない
倦怠感・右上腹部の違和感が続いている
よくある質問(FAQ)
Q. 痩せているのに脂肪肝と言われました。なぜですか?
体重が標準以下でも「内臓脂肪型肥満」や糖質の過剰摂取・極端なダイエットによる代謝異常で脂肪肝になることがあります。「隠れ脂肪肝」と呼ばれるケースです。体型だけで判断せず、血液検査・超音波検査で確認することが大切です。運動不足で筋肉量が減っていると、余ったエネルギーが肝臓に脂肪として溜まりやすくなるからです。
Q. 脂肪肝は完全に治りますか?
初期の脂肪肝であれば、食事・運動・禁酒などの生活習慣改善で完全に回復することが多いです。ただしMASH(代謝異常関連脂肪肝炎、旧称NASH)や線維化が進んだ段階では完全回復が難しくなります。早期発見・早期対処が重要です。
Q. 脂肪肝の改善にサプリメントは効果がありますか?
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)・ビタミンEについて脂肪肝改善の研究報告がありますが、現時点では生活習慣改善が最も効果的です。サプリメントを使用する場合は担当医に相談してください。
Q. 脂肪肝と診断されたら禁酒しなければいけませんか?
アルコール性脂肪肝の場合は禁酒が最善です。非アルコール性でも飲酒は肝臓に負担をかけるため、節酒が推奨されます。担当医の指示に従って対応してください。
脂肪肝を予防するための生活チェックリスト
以下の項目で当てはまるものが多いほど、脂肪肝のリスクが高まります。生活習慣を見直すきっかけにしてください。
毎日お酒を飲む、または週に何度も飲む習慣がある
BMIが25以上(肥満)、または腹囲が男性85cm・女性90cm以上
甘い飲み物(清涼飲料水・ジュース)や菓子をほぼ毎日摂る
運動習慣がほとんどない(週1回未満)
健康診断でALT・AST・γ-GTP・中性脂肪の異常を指摘されたことがある
糖尿病・高血圧・脂質異常症と診断されている
最近1〜2年で体重が急激に増えた
3つ以上当てはまる場合は、一度腹部超音波検査と血液検査(肝機能検査)を受けることをおすすめします。早期に発見することで、生活習慣の改善だけで回復できる可能性が高まります。
メディア運営者の方へ
今回紹介した最新の健康ニュースに関する記事など、正しいヘルスケア記事を公開するためには医師監修は欠かせません。
オンライン完結で医師監修ができるメディコレWEBについて、「オンライン完結!メディコレの医師監修サービス「メディコレWEB」とは?」でも紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
ご興味いただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。
まとめ
脂肪肝は自覚症状がほぼないため軽視されがちですが、放置すると肝炎・肝硬変・肝がんへと進行する危険性があります。成人の約9〜30%が該当するとも言われる身近な状態ですが、早期発見・早期対処で十分に改善が期待できます。
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたら、まずは消化器内科を受診し、食事・運動・禁酒など生活習慣の改善に取り組みましょう。体重を7%減らすことを目標にした生活習慣改善が、脂肪肝改善の最も効果的なアプローチです。
参考文献
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。










