株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、合同会社パラゴン 代表で”メンタル産業医”の櫻澤博文先生にお話を伺いました。

「倒れてから、はじめて呼ばれる」——メンタル産業医という役割の原点

――本日はよろしくお願いいたします。まず、先生が「メンタル不調の予防」に力を注ぐようになった原点を教えてください。
櫻澤先生 産業医として現場に関わるなかで、ずっと感じていた「悔しさ」が原点です。多くの場合、産業医が呼ばれるのは、企業の誰かが倒れてしまってからなんですね。組織が慌てて助けを求めてくる。でも本当は、そこに至るずっと前から、小さなサインは出ていたはずなんです。
ある時、強く思いました。「今、目の前の一人を救うことももちろん大切だけれど、症状が出る前にこそ支援が必要なのではないか」と。倒れてからの対応だけを繰り返していては、根本は変わりません。それなら、不調を未然に防ぐ側に回ろう。そう考えるようになりました。
――「メンタル産業医」という呼び方は、先生ご自身が名付けられたと伺いました。
櫻澤先生 はい。私が産業保健に関わり始めた頃は、「産業医といえば健康診断や休職者への対応をする人」という理解が一般的でした。メンタル面の“予防支援”の重要性は、ほとんど認識されていなかったんです。
そこで、既存の役割の定義にとどまるのではなく、「メンタル不調の“兆し”に気づき、組織として予防していく」専門家でありたいと考え、自らの活動を【メンタル産業医】と名付けました。さらに、それを学術的に裏付けるために「産業保健精神疫学」という領域にも取り組んでいます。臨床疫学を学んだ人間として、感覚論ではなく、根拠をもって予防を語りたいという思いがありました。
「変調のサイン」に気づく——日々の支援で大切にしていること
――先生が日々の産業医活動や研修で、特に大切にされていることは何でしょうか。
櫻澤先生 「その前」に気づくことです。メンタルヘルス対策というと、どうしても「うつ病になってからの対応」や「ストレスチェックの実施」に話が偏りがちです。けれども、本当に支援のチャンスがあるのは、その手前の段階なんです。
たとえば「遅刻が増えた」「書類の提出が遅れがちになった」「表情が乏しくなった」——こうした変化は、すべて“変調”という小さなサインです。その段階で気づき、声をかけ、寄り添うことが、深刻な不調を防ぐ鍵になります。私は、この未然予防の視点を、医学的な根拠と現場での実体験の両面から、できるだけ具体的にお伝えするようにしています。
――先生の語りは「経営目線」と「医学的エビデンス」が両立している点が特徴だと伺いました。
櫻澤先生 単なる医療知識の解説で終わらせないことを意識しています。産業医として多くの企業に関わってきたからこそ、「現場感」や「組織マネジメントの視点」を交えてお話しできると思っています。
たとえば、メタボとメンタルの意外な接点、ストレスチェックを“本当に使える”ツールに変える方法、健康診断結果を「読み流さない」視点など、企業の現場で“明日から使える”実務的なヒントに落とし込むことを心がけています。理論と実践、その両方をつなぐことが、私の役割だと考えています。
「誰も倒れない組織」を目指して——文化づくりと、伝える工夫

――先生が目指している組織の姿について教えてください。
櫻澤先生 「誰も倒れない組織をつくる」ことです。そのために必要なのは、一部の人だけが頑張ることではなく、組織全体の“気づく力”を高めていくことだと考えています。
メンタル不調の予防は、個人への対応だけで完結するものではありません。全社に広げるべき“文化づくり”として取り組むべきテーマです。上司、人事、産業医、そして家庭——立場の異なる人たちがそれぞれの役割で連携できれば、サインを見逃さない組織に近づいていきます。
――ご著書や講演を通じた発信にも力を入れてこられました。難しさはありましたか。
櫻澤先生 ありました。一番難しかったのは、抽象的な理念を「具体的な行動のヒント」にまで落とし込むことです。支援のあり方は立場によって異なります。上司なら「声のかけ方」、人事なら「制度設計」、産業医なら「関係性の構築」、というように。
ですから、「誰もが自分の立場に引きつけて聞ける構成」を徹底し、生活や職場で実際に起こる出来事をベースに語るようにしました。読者や受講者の方に「これは私にも当てはまる」と感じていただける具体性と納得感を、両立させたかったんです。日本医事新報社から出した『「メンタル産業医」入門』も、アチーブメント出版との共著『究極の疲れない脳』も、根っこにあるのは同じ——働く人の支援を、専門家としてどう捉えるか、という問いです。
メディコレWEBの監修に込める想い

――先生にはメディコレWEBの監修医としてご協力いただいています。どのような思いで携わっていただいているのでしょうか。
櫻澤先生 「症状が出る前から苦しんでいる人に、どうすれば早く手を差し伸べられるか」——これは、私が活動の軸に据えてきたテーマです。その答えのひとつが、正しい情報を、立場を問わず多くの人に届けることだと考えています。
特にメンタルヘルスの領域は、不正確な情報が広まると、誤った理解から相談や受診が遅れてしまうことがあります。エビデンスに基づいて医師が監修した記事は、読者が安心して参考にできる情報源になります。文字で残る記事には、気になった時に何度でも読み返せるという強みもあります。診察室や研修では届かなかった方と出会える、もう一つの大切な窓口だと感じています。
――最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
櫻澤先生 メンタルヘルスというと、制度や法律の話から入りがちですが、その前にできることがあります。それは、「小さな変化に気づく力」と、「関係のなかで声をかけ合う勇気」を持つことです。
忙しい現場でも、上司の「一言の声かけ」が、組織の空気を変えるきっかけになることがあります。もし「自分の職場でもできることがある」と感じていただけたなら、まずは少し気になるあの人に、目と心を向けてみてください。そして、組織として改善を考えるときには、ぜひ【メンタル産業医】を“相談できるパートナー”として思い出していただけたら嬉しいです。「誰も倒れない組織」への第一歩は、いつも現場の小さな気づきから始まります。
まとめ
健康・医療に関する情報があふれる今、コンテンツの正確さと信頼性はかつてないほど重要になっています。専門医による監修は、誤った情報が読者の判断に影響するリスクを未然に防ぐだけでなく、検索エンジンからの信頼性評価にもプラスに働きます。
株式会社メディコレの「メディコレWEB」は、専門医による監修をオンラインで手軽に受けられるサービスです。メディコレWEBについて、「オンライン完結!メディコレの医師監修サービス『メディコレWEB』とは?」でも紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。









