株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、耳鼻咽喉科の専門医として長年の臨床・研究に携わりながら、西洋医学と補完医療を融合する「統合医療」に取り組む朴澤孝治先生にお話を伺いました。

西洋医学と補完医療をトータルで提供
――本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、先生が医師を志したきっかけから伺えますか?
朴澤先生 私の父も耳鼻咽喉科の医師で、大学で教鞭をとっていました。その影響は少なからずあったと思います。進路を考えるとき、世のため人のためになる仕事を、と考えて――自分はそれほど社交的なタイプでもないので、特殊な技術を持って貢献するほうが向いているのかな、と。それで医師を選びました。
――耳鼻咽喉科を選ばれたのはなぜでしょうか。
朴澤先生 40年以上前のことですが、当時から研究もやってみたいと思っていました。脳を研究したい気持ちもありましたが、当時はMRIもなく、脳の中がまだよく分かっていない時代でしたので難しかった。耳鼻咽喉科は感覚器を扱うので、インプットとアウトプットの関係がはっきりしていて、研究をしやすい環境が整っていたんです。もう一つは、診察から手術まで一貫して患者さんの経過を診られること。そして感覚器の治療は結果が明確です。聞こえが良くなった、声が出るようになった、食べられるようになった――それがはっきり分かるので、患者さんに嘘がつけない。自分を追い込むような厳しさがある一方、結果が良くなれば患者さんと一緒に喜べる。40年やって、本当に良かったと思っています。
――現在は統合医療にも力を入れておられます。どのような経緯だったのでしょうか。
朴澤先生 大学にいた頃は、エビデンスを最優先に、西洋医学を一生懸命やっていました。ただ、年齢を重ねるうちに、どうしても西洋医学だけでは解決できない患者さんが出てきます。私を頼ってきてくださった方の症状を、なんとか改善したい。『神経のせい』『気のせい』とうやむやに対症療法へ入るのは好きではなかったので、『なぜこの人は治らないのか』を突き詰めていきました。すると、その方ごとに“治癒を妨げる要因”がある。生活環境だったり、仕事だったり、食生活だったり。それを一つひとつ見出して直していくと、西洋医学的に治らなかった症状がすっと良くなる、という経験を重ねていったんです。
特に大きかったのは、東日本大震災です。私は仙台にいます。昨日まで家があり、家族があり、職場があった方が、一夜にしてすべてを失う。その苦しみは西洋医学だけではとても支えきれません。西洋医学は臓器の異常を見つけ、急性の症状を治すことにはとても優れています。ただ、人の体は臓器の単なる集合体ではなく、それぞれが影響し合って一つの体をつくっている。だからこそ、西洋医学と補完医療の“それぞれの効果と限界”を正しく認識して、患者さんに最適な形を提供したいと考えています。
体を「システム」として捉える

――具体的には、どのように体を診ていくのですか。
朴澤先生 一番下のレイヤーに臓器があり、その上にいくつもの層が重なっているとイメージしています。まず自律神経。臓器を調整する働きです。次にホルモンのバランス。女性の更年期や月経前後、ストレス社会で副腎から出るストレスホルモンの問題などですね。それから栄養のバランス。飽食の時代でも、必要なミネラルやビタミンが不足している方は少なくありません。さらに腸内環境。腸内細菌の状態が、お腹の調子だけでなく心身にも影響することが分かってきています。加えて免疫・アレルギー、そして加齢。これらの層に問題がないかを一つずつ見て、あれば整えていく。臓器のレベルは西洋医学が、それ以外の層は漢方などの補完医療も併せて――そういうアプローチで、幅広い不調に対応できるようになってきました。
――震災の後、検査では異常がないのに不調が続く方も多かったそうですね。
朴澤先生 臓器も、その上の層も検査では問題ないのに、とても調子が悪いという方がいました。突き詰めると、環境の影響で“自分を見失う”ことが一因だと分かってきたんです。日々の中で、何をやってもうまくいく調子のいい時ってありますよね。それは、いわば自分の“中心軸(セントラルアクシス)”にちゃんといる状態です。ところが周りの影響でそこからブレてしまう。震災のような大きな出来事があると、ブレすぎて自分を見失い、体調を崩してしまう。
それを中心軸に戻すサポートとして、私は主に二つの方法を取り入れています。一つはマインドフルネス。8週間ほどのプログラムで瞑想を行い、ストレスを軽減して中心軸に戻していく方法です。もう一つが、ドイツで生まれた同種療法(ホメオパシー)です。私は英国ホメオパシー学会(Faculty of Homeopathy)の認定を受けており、補完医療の一つとして症例に応じて用いています。当院で大切にしているのは、それぞれの治療法の効果と限界を正しく認識し、利点と欠点を客観的にお伝えしたうえで、可能な限り患者さんご自身が選べるようにすることです。
「4回の通院」で自立できる医療を目指す

――臨床で大切にされていることは何でしょうか。
朴澤先生 目の前の患者さんの問題を解決したい、というのが第一です。検査で分かるレベルの上に行くには、その方が今どう生き、過去にどんな人生を送ってきたかまで伺う必要があるので、患者さんとよく話すことを大切にしています。もう一つ大事にしているのが、『病院に通わなくていい状態にする』こと。私は、うちに“だいたい4回”通っていただく間に問題を解決することを目標にしています。4回というのは、まずお話を伺い、検査をして、結果を説明し、治療方針を決めて効果を判定する――そのために最低限必要な回数なんです。毎日で4日のこともあれば、月に1回で4カ月、年に1回で4年のこともあります。患者さんを囲い込むのではなく、自立して卒業していただく。それを大切にしています。遠く九州や北海道から『4回通うと良くなると聞いて』と来てくださる方もいて、そうした声は本当にありがたいですね。
――今、注目していることや、これから挑戦したいことはありますか。
朴澤先生 40年やってきて、来られる患者さんの問題は9割以上解決できるようになりました。次の目標は二つあります。一つは、平均寿命と健康寿命の差――誰の世話にもならず自立して生きられる期間の差――を埋めること。今はまだ10年ほどの開きがあります。老化も一種の“病気”と捉え、抗加齢医療に取り組んでいます。特に注目しているのが、細胞のエネルギーを生み出すミトコンドリアです。加齢とともに機能が下がり、エネルギーが作りにくくなる。そこを維持・向上させることで、老化の進行を緩やかにできると考えています。
もう一つは、その人が“どう最期を迎えるか”です。いわゆる『ピンピンコロリ』は、突然のことで残された家族に大きなトラウマを残すことがあります。痛みなく、家族や友人にきちんと別れを告げ、尊厳を持って老衰で旅立てるのが、本人にもご家族にも一番いい。健康に自立して生き、最後は穏やかに――そのサポートをすることが、これからの大切な課題だと思っています。一生涯にかかる医療費は、その多くが人生の後半に使われます。健康寿命を延ばし、穏やかに最期を迎えられれば、医療費の面でも、その方の生き方としても、より良い形になるのではないでしょうか。
「正しい情報を、正しく伝える」ことが医師監修の意義
――健康・医療情報の監修に、専門家が関わる意義をどうお考えですか?
朴澤先生 とても必要だと思います。『納豆は体にいい』という話が出た次の月には『納豆は良くない』という話が出る。皆さん、何が正しいのか分からず混乱してしまいますよね。診察をしていても、インターネットの情報に頭が固まってしまって、こちらの説明がなかなか伝わらないことがあります。だからこそ、専門家が正しい情報を選び、正しく伝えることがとても大切です。健康は“教養”です。正しい情報を身につけて、ご自分の生活に活かしていただく。そのお手伝いができればと思っています。
――最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
朴澤先生 情報が氾濫している時代です。だからこそ、正しい情報を取捨選択して、ご自分の生活に活かしていただくことが大切だと思います。体は、臓器も、心も、生き方も、すべてつながっています。目の前の症状を抑えるだけでなく、その奥にある“治癒を妨げる要因”に目を向けて、心と体を丸ごと健やかにしていく。そんな視点を、少しでも持っていただけたら嬉しいですね。
まとめ
健康・医療に関する情報があふれる今、コンテンツの正確さと信頼性はかつてないほど重要になっています。専門医による監修は、誤った情報が読者の判断に影響するリスクを未然に防ぐだけでなく、検索エンジンからの信頼性評価にもプラスに働きます。
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