株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、東京都立墨東病院 集中治療科の宮崎直先生にお話を伺いました。

救急医療からたどり着いた「神経集中治療」

――本日はお時間いただきありがとうございます!まず初めに、先生が医師を志した理由を教えてください。
宮崎先生 一番の原点は、中学生のときに見た新潟県中越沖地震の報道です。テレビをつけると、被災地の様子と、そこへ支援に向かう人たちの姿が映っていて、本当にカオスな状況の中で支援が行われている、その光景が今も記憶に残っています。当時は『こういう世界があるんだ』という程度の思いでしたが、それが医療というものを知ったきっかけでした。
高校で進路を考えるとき、野球部だったので高校野球の監督をやりたくて教育学部、父が電子系の工場で働いていたので工学部、そして中学生のときに見たあの被災地の光景から医療、という3つで悩みました。最終的に医学部を選んだのですが、根っこにあったのは『災害医療をやりたい』という思いでした。
――災害医療から救急、そして今は集中治療と、進路を重ねてこられたのですね。
宮崎先生 そうですね。『災害医療をやるには救命救急をやらないといけない、そのためには医学部へ』という逆算でキャリアを決めてきました。だから救急に進むことは、あらかじめ決めていたようなものなんです。
2年の浪人を経て大学に入り、東京都立墨東病院での初期研修ののち、専攻医1年目は都立広尾病院の救命救急センターへ。ちょうど2021年、新型コロナの感染が広がっていた時期でしたので、コロナ対応に従事していました。ただ、救急科専門医を取るにはさまざまな症例を経験する必要があり、このままでは新型コロナ対応しか経験していないことになると思い、相談の結果別の病院へ移らせてもらいました。
その後はさいたま赤十字病院の救命救急センターで2〜3年目を過ごし、『外傷メインの救急』を経験できました。
――現在の神経集中治療には、どのように出会ったのですか?
宮崎先生 埼玉県のTMGあさか医療センターでの研修です。神経集中治療は日本ではまだあまり知られていない分野で、TMGあさか医療センターは国内のメッカと言える場所なんです。興味本位で行ってみたらとても面白いと感じました。来院時は無反応で『この人はもう起きないかもしれない』という患者さんが、数か月後には車椅子に乗ってご飯を食べている。そんな光景を目の当たりにして、ここに賭けたいと思いました。
パニックの現場で、冷静に。意識のない患者への敬意を忘れずに

――臨床で大事にしていることはありますか?
宮崎先生 救急の現場は、重症の方が運ばれてくるとパニックになりやすいものです。ですから、一歩引いて俯瞰するということを常に意識することが大事です。自分が慌ててしまっていることに早く気づいて冷静に戻す、という作業を意識的にやっています。
患者さんに対しては、意識のない方であっても『人として接する』ことを大切にしています。救急や集中治療の現場では、相手が人であることを忘れてしまう場面も正直あります。だからこそ、患者さんをご自身の身内だと思って接するようにしているんです。
「機能予後の最大化」と、向き合うべきシビアな現実
――神経集中治療を通じて、どんな医療を実現したいですか?
宮崎先生 一つは、機能予後の最大化です。生命予後ではなく『どれだけ元の生活に近い状態に戻せるか』。重症だった方が車椅子で生活できるまで回復し、ご飯を食べ、家族と会話する。最高のゴールは社会復帰や競技復帰です。たとえば元気にゴルフをしていた方が脳卒中や事故で運ばれてきたとき、またゴルフができるように、また仕事ができるように一緒に向かっていく。そこに大きなやりがいがあります。
一方で、神経集中治療は、シビアな現実とも向き合う分野だということを忘れてはいけません。患者さんの脳が治療で良くなる見込みがあるのかを見極めることは非常に重要で、今まさにホットなテーマです。
脳波やMRIなどさまざまな所見を組み合わせて回復の見込みを推し量ります。遷延性意識障害、いわゆる植物状態になられた場合、ご家族の介護負担や経済的負担、そして国の医療費の問題も現実に関わってきます。治療を継続するのかどうかを早い段階で見極める――その判断に神経集中治療が深く関わります。2050年に向けて高齢化が進む中、こうした問題はますます顕在化していくはずで、医療経済にとっても重要な分野だと考えています。
医師の枠を超えて――メンタルコーチという挑戦

――現在チャレンジしていることを教えてください。
宮崎先生 医師としては、災害医療と神経集中治療が今の自分の軸で、そこにプラスして産業医の領域を広げていきたいと考えています。
もう一つは、医師とは別の挑戦です。小学4年生からずっと野球をやってきたので、いつか野球に関わる仕事がしたいと思っていました。今はメンタルコーチングを半年ほどのプログラムで学んでいて、ゆくゆくはアスリートのパフォーマンスアップをメンタル面から支える役割を担いたい。個人やチームと契約してメンタルスキルを伝える、そんな形を考えています。せっかく医師免許という背景があるので、脳波計を使った効果判定など、科学的なアプローチも加えられないかと模索しています。アマチュアでもメンタルが原因で競技をやめてしまう人は多いので、野球人口を増やすことにもつなげたいですね。
AIの時代だからこそ、専門家が情報の質を担保する――医師監修への思い
――先生はメディコレWEBの監修医として記事監修にご協力いただいていますが、その意義をどうお考えですか?
宮崎先生 健康に関する記事は医療を知ってもらうきっかけになると感じています。
今はAIで記事が無限に作れる時代です。私自身もAIは使いますが、決して信頼しきらず『どこかに間違いがあるはずだ』という目で見て、ざっくりとアウトラインを作ってもらい、細かいところは自分で調べてチェックします。だからこそ、医師が監修すること自体に意義があると思うんです。専門の医師が関与することで、安心して情報に触れていただく環境ができると考えています。1人の医師だけではなく、複数人の監修を受けてもいいとすら思います。
監修をすると医者の側にも『変なことは言えない』という責任感が生まれ、自分で調べることが自分の学びにもなる。読者にとっても医療者にとっても、双方にとって良いことだと考えています。
――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
宮崎先生 医師としては、災害医療と神経集中治療という2つの軸、その土台に救急がある、というのが自分の本質です。一方で、医師以外の部分にも挑戦したいと思っていて、その熱量の源はやはり野球です。メンタルコーチングは野球に限らず、さまざまな競技やアスリート、マインドフルネスやビジネスパーソンにも通じるものなので、今後10年20年でいろいろな方を支えられるようになりたいと考えています。
毎朝の電車で、みんなが下を向いてスマホを触っている光景を見ると、これではメンタルも不調になりますよね、と感じます。病院の中だけでなく、産業医やアスリートサポートといった形で、マイナスをゼロに、ゼロをプラスにするようなメンタルサポートを、病院の外でも実践していきたい。ヘルスケアの分野で一緒に取り組めることがあれば、ぜひお声がけいただけると嬉しいです。
まとめ
健康・医療に関する情報があふれる今、コンテンツの正確さと信頼性はかつてないほど重要になっています。専門医による監修は、誤った情報が読者の判断に影響するリスクを未然に防ぐだけでなく、検索エンジンからの信頼性評価にもプラスに働きます。
株式会社メディコレの「メディコレWEB」は、専門医による監修をオンラインで手軽に受けられるサービスです。メディコレWEBについて、「オンライン完結!メディコレの医師監修サービス『メディコレWEB』とは?」でも紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。









