🗒️ この記事でわかること |
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2026年9月1日(米国時間)、OpenAIが、米国の病院で最も広く使われている電子カルテサービス「Epic(エピック)」と「ChatGPT for Healthcare」を接続する統合機能と、9つの公的医療データソースに接続するプラグインを発表しました。EHR(Electronic Health Record)統合は読み取り専用とされ、患者記録への書き込みは行いません。米国ではUCSF Healthがパイロットパートナーとして参加しています。
日本で同じことをするためには制度側の整備が先に必要で、それこそ年単位の時間がかかります。一方で、こうしてAIが個人の健康状態を前提にして会話するようになると、「医療機関での治療以外の選択肢」が話題に上る場面が増えます。そのとき、AIに言及されるかどうかは、ヘルスケアブランドにとって大きな意味を持つことになります。
OpenAIによる発表の内容
米国の電子カルテ最大手Epicとは
Epic Systems(エピック・システムズ)は、米国の病院で最も広く使われている電子カルテのベンダーです。日本ではほとんど知られていませんが、米国の医療現場では標準的な存在です。KLAS Researchの2025年データを報じた業界メディアによると、米国の急性期病院に占める割合は、病院数ベースで43.7%、病床数ベースで56.9%です。2位のOracle Healthが病院数ベースで21.9%、3位のMeditechが14.7%ですので、1社が突出しています。ただし、これは米国の全医療機関ではなく、急性期病院を対象とした数値です。
日本でいえば、病院向けの電子カルテを供給している富士通Japan、ソフトウェア・サービス、CSI、NECといった事業者にあたる位置づけです。ただし、市場の形が異なることに注意が必要です。
米国(Epic) | 日本 | |
|---|---|---|
主要ベンダー | Epic Systems | 富士通Japan、ソフトウェア・サービス、CSI、NECなど |
集中度 | 1社で急性期病院の43.7%、病床の56.9% | 複数の事業者に分散 |
AIと連携する意味 | 1社とつながれば、対象になり得る母数が米国の病床の半分以上になる(急性期に限定した場合) | 接続先が分かれるため、同じ母数には複数社との連携が要る |
米国の数値はKLAS Researchの調査に基づく報道、日本の主要ベンダーは月刊新医療「医療機器システム白書2026」の掲載情報にもとづく集計(2025年3月末時点の稼動実績、クリニックを除く)によります。
今回の発表が「ChatGPTが米国の病院の患者記録につながる」と受け止められている背景には、この集中度があります。ただし、Epicを使っている医療機関のすべてで、すぐに使えるようになるわけではありません。医療機関側での有効化、Epic環境の設定、利用する臨床医の権限が前提になります。集中度が意味しているのは、対象になり得る母数が大きいということです。
日本で同じことが起きるには、制度側の整備が先に必要です。電子カルテ情報共有サービスは2026年度冬ごろの全国展開が目標とされ、診療所・中小病院向けの標準型電子カルテは2027年4月の提供開始が目指されています。加えて日本では電子カルテのベンダーが複数に分かれているため、Epic1社との統合のように一気に広がる形にはなりにくいと考えられます。一方、生活者側の動きは先行しており、OpenAIは2026年7月から米国在住の18歳以上を対象に、Apple Healthや医療記録と接続できる「ChatGPT Health」の提供を始めています。

発表された2つの機能
発表は2つの機能で構成されています。
機能 | 内容 |
|---|---|
EHR統合 | 対応するEpic環境とChatGPTを接続し、許可された臨床医に患者の文脈を提供する。①ChatGPT側に患者情報を取り込んで履歴を確認するモード、②Epicの患者チャート内でChatGPTを使うモードの2つ |
Healthcare Public Dataプラグイン | 9つの公的データソースに接続する(内訳は下表) |
接続先の9つは、OpenAIのヘルプセンターで内訳が公開されています。
データソース | 収録されている情報 |
|---|---|
PubMed | 生物医学研究の文献、引用、抄録、条件を満たす全文 |
ClinicalTrials.gov | 臨床試験の一覧、実施施設、募集情報、適格基準 |
DailyMed | 公式の医薬品ラベル、成分、包装情報、医薬品識別子 |
RxNorm | 標準化された医薬品名、識別子、関連する医薬品概念 |
openFDA | FDAが公開する安全性・規制情報、回収、有害事象報告 |
CMS Coverage | 全国および地域のメディケア給付対象情報 |
CMS Open Data | メディケアパートB・パートDおよび入院医療の支払い・処方・利用データ |
Medicare Care Compare | 公開されている医療施設情報と品質指標 |
NPI Registry | 公開されている医療提供者・組織の識別レコード |
論文、臨床試験、添付文書、医薬品の識別、安全性情報、保険給付、支払い実績、施設の品質、提供者の識別。医薬品と医療提供体制の公的な情報が、ひととおり揃っています。
OpenAIは新たな機能について、事前訪問レビュー、臨床タイムライン、薬剤レビューなどを含む27の臨床ユースケースについて医師評価者が応答を評価した結果を公表しています。その結果、4,363件の評価のうち99.1%が「安全」と判定されたとしています。公的データソース5種を対象にした別の検証では、93%超が「good」以上の正確性評価を得たと報告されています。

AIが個人の健康を把握する時代のAIO対策
これまでのAIO対策は、個人の健康情報を把握していないAIを前提にしてきました。「更年期 サプリ おすすめ」と尋ねた相手が果たして更年期症状に悩む人かどうか、AIは知りません。だからAIは一般論を返し、ブランド側は「一般論のなかで名前が挙がるか」を競ってきました。
これが、個人の健康情報を持ったAIを相手にする場合では、前提が変わります。わかりやすく整理すると以下です。
個人の健康情報を持たないAI | 個人の健康情報を持つAI | |
|---|---|---|
質問 | 「更年期のサプリでおすすめは?」 | 「更年期がつらい。何かできることはある?」 |
AIが持っている情報 | 質問文のみ | 質問文に加えて、年齢、服薬中の薬、直近の検査値、アレルギー、既往症などの情報 |
回答の形 | 一般的な選択肢の列挙 | 条件を踏まえた絞り込み |
ブランドの勝敗 | 想起されるか | 候補に残るか |
「医療機関での治療以外のソリューション」が求められる場面は、この右の列に集まります。受診が必要な段階ではないと判断されたとき、あるいは受診と並行して生活面の対策を探すとき、AIは食品・サプリメント・OTC医薬品・日用品・サービスに話題を広げます。ヘルスケアブランドにとって機会が生まれるのはこの局面です。

AIOの評価軸に「除外の関門」が加わる
ここから先は本記事の仮説です。 各AIサービスがこうした処理を行っていることを示す公開仕様や第三者検証は、現時点では確認できません。
個人の健康情報を持ったAIが候補を挙げるとき、想起の前にもう一段の処理が挟まる可能性があります。「選択肢に挙げていいか」の確認です。
従来のAIO対策 | 個人の健康情報を持つAIへのAIO対策 | |
|---|---|---|
問われること | 一般名詞クエリで想起されるか | 除外されずに候補に残り、そのうえで想起されるか |
効くもの | 引用されやすい記事構造、権威性のある一次情報 | 左記に加えて、成分・含有量・相互作用・禁忌・対象外の人が明示されていること |
弱点 | 情報がないと想起されない | 情報がないと、想起される前に候補から落ちる |
AIの内部処理は公開されていないため断定はできませんが、安全性に関わる判断材料が参照可能になった以上、その材料の有無が挙動に影響しない理由も見当たりません。
成分表示、エビデンスの出典、注意喚起、対象外となる人の条件を、構造化された形で置く必要が出てくると考えています。

機会は増えるのではなく「最適化」される
AIへの健康相談が増えれば、ヘルスケアブランドの露出機会が増える可能性があることは間違いありません。しかし、先ほども述べたように、「このユーザーにとってフィットしているか」という判断をAIがすることで、闇雲に露出が増えるのではなく、ユーザーごとに露出が最適化される結果になるはずです。
おそらく健康情報を持ったAIによる推奨は、保守的な方向に寄ると想定されます。相手の健康状態を知っているぶん、安全側にウェイトをかける理由が増えるためです。結果として、承認・許可・届出といった制度上の裏付けがある選択肢や、専門家の関与が確認できる選択肢に候補が集まりやすくなることが予想されます。
AIのふるいにかけられることを想定して準備するブランドと、準備不足のブランドでは、露出に大きな差が出るのではないでしょうか。
ヘルスケアブランドができる対策
制度整備を待たずに着手できることは、大きく4つに整理できます。
準備 | 内容 | なぜ効くか |
|---|---|---|
安全性情報の可読化 | 成分と含有量、想定される相互作用、対象外となる人、注意喚起を、パッケージや紙資料だけでなくWeb上に構造化して置く | 除外の関門を通過するための材料になる |
一次情報の設置 | 誰が、どんな資格で、何を根拠に評価したのかが検証できる情報を自社ドメインに置く | AIが参照先として扱いやすい形になる |
「語られ方」の測定 | 引用されているかだけでなく、どういう文脈で言及されているかを継続的に測る | 現状を知った上で対策を取れる |
表示の整合 | 広告表現、パッケージ表示、Web上の記載の食い違いをなくす | 記載が割れていると、AIは慎重な側の記載を採る可能性がある |
1つ目と4つ目は、薬機法・景表法の観点でも見直しが必要になる領域です。本記事は法的助言ではありませんので、実際の表現判断は所管の専門家にご確認ください。
2つ目については、実名の専門医による評価を一次情報として構造化する方法を当社で運用しています。実例として、食事管理アプリを対象に医師6名が4項目で評価した記事(総合3.7/5点満点、2026年2月5日公開)を公開しています。
3つ目の測定設計や、AIO対策全体の考え方は、AIO対策とは何か──ヘルスケア・食品ブランドのためのAI検索対策 完全ガイド【2026年版】で整理しています。

まとめ
OpenAIのEHR統合とHealthcare Public Dataプラグインの発表は、AIが「ユーザーの健康情報を知らない前提」から「知っている前提」へ移る動きの一部です。日本での実装は制度整備を待つことになりますが、生活者側の健康データと接続したAIは世界ではすでに動き始めています。
ユーザーの健康情報を持ったAIでは、AIO対策で問われるレベルが一段上がります。想起されるかの前に、除外されずに候補へ残れるか。そこで効くのは訴求の巧拙ではなく、成分・エビデンス・注意喚起・対象外条件が検証可能な形で置かれているかどうかです。
機会は総量として増えるのではなく、ユーザーごとに最適化されます。そのふるいを通るかどうかで、ブランド間の露出差は今より開きます。整えるための材料は、制度の完成を待たずに揃えられます。
ヘルスケア領域に特化したAIO対策については、Medi-ARMでサービスの内容と料金を公開しています。
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よくある質問(FAQ)
参考文献
OpenAI「Healthcare organizations can now connect EHR and additional industry data to ChatGPT」(2026年9月1日、米国時間/アクセス日:2026年9月2日)
OpenAI Help Center「Using Healthcare Public Data in ChatGPT and Codex」(アクセス日:2026年9月2日)
OpenAI「Launching Health in ChatGPT」(2026年7月23日/アクセス日:2026年9月2日)
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(アクセス日:2026年9月2日)
GemMed「2027年4月からの「標準型電子カルテ」供給目指し、本年9月に認証要綱を公開」(2026年/アクセス日:2026年9月2日)
ITmedia NEWS「OpenAI、健康支援機能「ChatGPT Health」発表」(2026年1月8日/アクセス日:2026年9月2日)
Becker’s Hospital Review「Epic up by 77 hospitals: 8 things to know」(KLAS Research調査の報道/アクセス日:2026年9月2日)
株式会社ソフトウェア・サービス「電子カルテのシェア情報」(月刊新医療「医療機器システム白書2026」掲載情報にもとづく2025年3月末時点の集計/アクセス日:2026年9月2日)
数値の出典:上記の各公表資料。本記事に当社の実測データは含みません










