「会議より、現場で一つずつ。小さな実践が社会を動かす」――内科医・上昌広先生の思い

インタビューに応じる上昌広先生

「会議より、現場で一つずつ。小さな実践が社会を動かす」――内科医・上昌広先生の思い

2026年7月9日
インタビューに応じる上昌広先生

「会議より、現場で一つずつ。小さな実践が社会を動かす」――内科医・上昌広先生の思い

2026年7月9日

株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、内科医として臨床に立ちながら、医療ガバナンス研究所を拠点に研究・人材育成に取り組む上昌広先生にお話を伺いました。

上昌広先生の思い

現場に立ち続ける――臨床と、年100本の研究

カメラに向かって微笑む上昌広先生

――本日はお時間いただきありがとうございます!まず、先生が医師を志したきっかけを教えてください。

上先生 いや、特別なものはないんですよ。流されて、流されて、医師になったんです(笑)。崇高な理想があったわけではありません。母方の祖父が医師をやっていて、親もそういうものに関心があったこと、そして当時は成績が良い人はみんな医学部に行きましたからね。そういう自然な流れです。

――専門の診療科は、どのように決められたのですか?

上先生 それも、研修医のときにご指導いただいた先生が良かったから、というだけで、深い理由はないんです。その場で出会った人とやっていく。だから、運と環境は大切なんでしょうね。私の場合は血液・腫瘍内科で、虎の門病院や国立がんセンターで造血器の悪性腫瘍の診療・研究をしてきました。

――現在も臨床の現場に立たれているのですか?

上先生 ええ、週に4日ぐらいは外に出て、内科の外来をやっています。自分たちで運営しているナビタスクリニックの外来に出るのと、20年来の先輩にご紹介いただいたところで非常勤を続けています。臨床の現場での活動は大切にしていますね。

――研究も精力的に続けておられます。

上先生 グループ全体で、英語論文が年間100本ぐらい出ています。NPO法人として運営していて、雇用関係があるわけではないのですが、関係者を含めると30〜50名ほど。学生の受け入れも積極的に行っています。

「その場でやれることを選ぶ」――課題解決のマイルール

――臨床や研究で、共通して大事にされていることはありますか?

上先生 これといった信条を掲げるというより、その時々に直面した問題に対して、現場でやれることを選択してやるしかない、という考えです。崇高な理想を掲げて「こう行こう」とするのではなく、その場でやれることをやる。

とはいえ、長くやっていれば流れは分かります。今起こっていることは、過去の積み重ねですから。過去を理解すること、そして実際に判断するのは「組織」ではなく「人」ですから、その人の性格を見れば、ある程度はどう動くかが分かる。そうして臨機応変に対応していくということです。

――いま先生が注目されていることは何ですか?

上先生 それは格差でしょうね。しかも、そう遠くない将来に、大きな波乱になりかねないと思っています。高齢者が増えているのに医療機関が倒産している一方で、人材派遣や電子カルテのメーカーが利益を上げていたり、製薬企業が業績の実態と乖離した配当を続けていたり……。どう見ても異常で、こうした構造は長くは続かないと思います。

歴史は繰り返すと言いますが、戦前のように社会的な不安が高まっていくようなことにならないでほしい、という危機感を持っています。だからこそ、机上の議論ではなく、もっと現場の声を聞いて、地に足のついた話をしないといけないと考えています。

会議より、小さくてもリアルな実践を

医療の未来を語り合う上昌広先生

――いま取り組まれていること、これから挑戦したいことを教えてください。

上先生 やれることは決まっていて、現場の問題を一つひとつ、一緒に解決していって、その過程で若い人材を育てることです。私たちは20年前にコンビニ型のクリニックを手作りで始めましたが、当時の学生から上場企業を作った人も、今AIの分野で活躍している人も出てきました。目の前の問題だからこそ、本気になれる。

医療政策や公衆衛生について、会議をいくら重ねても同じなんです。小さくてもいいから、リアルな現場で行動を起こす。うまくいったことは波及していきますから。東日本大震災のときも、私たちは福島にいち早く飛び込みました。製薬マネーのデータベースも、自分たちで作ってみたら、年間数百万円でできてしまう。自ら飛び込んで実証することが大事だと思っています。

そしてもう一つ大切なのは、経済的な自立です。勤務医のままだと、どうしてもお金の感覚が身につきにくい。経済的に自立していないと、若い人に信念を伝えることもできません。だからこそ、クリニックの運営などを通じて、現場での実践力やお金の感覚を養うことを勧めています。

「官でない公」を体現する若手を育てる

インターンと一緒に写真を撮る上昌広先生

――若手の育成について、特に重視されていることは何でしょうか。

上先生 システムを作ればうまくいく、という話ではないんです。目的が明確なときは仕組みも機能しますが、そうでなければ、今いる人に合わせてやるしかない。最初に飛び込んでくる人は、能力が飛び抜けているというより、少し変わった、突破力のある人が多い。だから、その人たちの個性に合わせて、何ができるかを見つけるのがリーダーの役割だと思います。

若手の成功には、単なる学歴ではなく、異文化のなかで揉まれる修行や、指導者との信頼関係が重要です。私自身のネットワークを使って、有望な若手を適切な指導者や機会につなぐ。そうして信頼関係を築いた人が力をつけ、戦力になっていく。個別の高等教育、いわば一人ひとりの物語なんです。私たちのNPOが掲げているのは、税金に依存せず、「官でない公」を体現する新しい研究者を育てること。それが、この研究所を立ち上げた理由でもあります。

――医療とAIについては、どうお考えですか?

上先生 システムによる標準的な判断は、AIでもできるようになるでしょう。診断はできるかもしれない。けれども、現場の人間関係や、ネット上には上がらない複雑な背景情報を踏まえた意思決定は、依然として専門家が必要です。どこの病院のどの先生が、どういうキャリアで、どういう人柄か――そうした情報は決してネットには出てきませんから。AIの時代になっても、現場の医療人の価値はむしろ相対的に上がると思いますよ。

健康相談にAIを使う人が増えていることには、注意も必要です。誤った指示に従って過剰に薬を飲んでしまったり、受診の機会を逃したりするリスクが伴いますから。便利になる一方で、こうしたリスクには慎重に向き合うべきだと思います。

記事監修は「編集者の志」に宿る――情報発信への思い

――ネット上に情報があふれるなか、医療従事者が公開前の記事に関わる意義をどうお考えですか?

上先生 これはケースバイケースで、結局は編集者の人柄、志に依るところが大きいと思います。仕組みやシステムそのものというより、本当に良いものを作ろうと真摯に取り組んでいる編集者なのかどうか。志のある編集者と協力して、正確な情報を発信し続ける関係性を築くことが大事です。

私はこれまで、医療系に限らずさまざまなメディアで20年にわたり連載を持たせていただきました。鍵括弧で語られるリアルな具体的な話こそ、人に一番刺さるんです。システム論は誰が書いても同じで、AIでも書けてしまう。だからこそ、現場の生きた言葉で発信し続けることに意味がある。志ある取り組みは、応援していきたいと思っています。

まとめ

健康・医療に関する情報があふれる今、コンテンツの正確さと信頼性はかつてないほど重要になっています。専門医による監修は、誤った情報が読者の判断に影響するリスクを未然に防ぐだけでなく、検索エンジンからの信頼性評価にもプラスに働きます。

株式会社メディコレの「メディコレWEB」は、専門医による監修をオンラインで手軽に受けられるサービスです。メディコレWEBについて、「オンライン完結!メディコレの医師監修サービス『メディコレWEB』とは?」でも紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

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