株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、神奈川県立こども医療センター 脳神経外科 診療科長の広川大輔先生にお話を伺いました。

父の闘病を機に決めた脳神経外科医への道
――本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、先生が医師を志したきっかけから伺えますか?
広川先生 私自身の父が、脳腫瘍で亡くなっているんです。私が小学生の頃、父が脳の原発性悪性リンパ腫という病気になりました。そのときは一度治ったのですが、その後に再発して、10年ほど前に亡くなりました。そうした経緯もあって、大学に入る時点で脳神経外科を志望し、医学部を経て、そのまま脳腫瘍を扱う道に進みました。今は小児の神経外科を専門にさせていただいています。
――進路を決めるうえで、迷いはありませんでしたか。
広川先生 脳神経外科がとても忙しいことは十分に分かっていました。医学部時代にいろいろな科を見て、もう少し生活の質を保ちやすい放射線科や、新生児科にも興味があって、ギリギリまで悩んだんです。ただ、最初から考えていた脳神経外科は、忙しさやいろいろなことを犠牲にしてでもやりたいことだと思い、最終的に選びました。
幸い、脳神経外科でも画像診断はよく使いますし、画像はとても大切な領域です。実際、博士号を取ったテーマもMRIの画像研究でした。今は小児を担当し、神経内視鏡も含めた手術を行っています。学生時代に思い描いていたこと――画像への関心も、子どもの医療への思いも、脳神経外科という選択のなかで実現できているなと感じています。
多職種が連携する『チーム医療』で患者に向き合う

――脳神経外科医としての働き方と、やりがいについて教えてください。
広川先生 たとえば先週は、金曜日に13時間ほどの手術があり、その方が水頭症を合併したので、翌日の朝9時から夜中3時頃まで内視鏡手術を行いました。今週も予定手術が入っている、という具合で、正直かなり忙しい世界です。それでも脳神経外科は、手術で患者さんを大きく良くすることができる。自分がやったことの影響が如実に分かるので、大変さに見合った、大きなやりがいがあるんです。
一番の安心は、手術直後の画像で、描いていた通りの成果が確認できたとき。そして、神経学的な後遺症なく経過を見届けられたときですね。それから、患者さんのご家族――特に小児では、ご両親の不安がとても強い。丁寧にお話しして、術後の経過のなかでご家族が安心していく様子を見ると、こちらもほっとします。それも大きなやりがいのひとつです。
――臨床で大切にされていることは何でしょうか。
広川先生 私も一人の父親ですから、患者さんご本人やご家族が困っておられることや、不安に感じられるお気持ちに、とても共感するところがあります。命に関わる病気も多く、必ずしも治せる病気ばかりではありません。手術で腫瘍を取り切っても、大きな後遺症が残り、その後の人生が大きく変わってしまう可能性もある。だからこそ、その状況での“最適”を、こちらから一方的に押し付けるのではなく、ご家族の価値観のなかで一緒に選んでいく。特に小さなお子さんはご本人の意思を確認するのが難しいので、ご両親と対話しながら治療を決めていくことを大切にしています。
もう一つ、小児脳神経外科は脳神経外科医だけで完結できることが多くはありません。全身については小児総合診療科、がんであれば小児血液・腫瘍科、そして放射線科、病理の専門医――そうした多職種が連携する『チーム医療』が不可欠です。患者さんをゴールへ導くうえで、とても大事なポイントだと思っています。
その時点の医療で、できる限りの“最適”を目指したい
――博士号を取得され、次に挑戦したいことは何でしょうか。
広川先生 研究テーマの一つは、博士号を取ったMRIの研究の発展です。MRS(磁気共鳴スペクトロスコピー)といって、MRIで腫瘍や脳の中の対象物を調べ、それが病態や状況によってどう変わるのか、バイオマーカーや治療の指標になり得るのかを研究しています。これを研究費をしっかり確保したうえで進めたい。小児特有の脳腫瘍は予後が厳しいものもありますが、集学的治療で良くなってきている部分もあるので、画像診断や手術方法も絡めながら、予後の改善につなげたいと考えています。
小児の症例は少子化で数が減り、対応できる施設も限られてきています。だからこそ、集約化された希少な症例をしっかりまとめ、発信していくことが大切です。加えて、水頭症に対するシャント手術――頭に溜まった水をお腹へ流す治療ですが、異物が入り続けることでQOLが制限される面もあります。神経内視鏡やシャントの改良によって、患者さんの生活の質を高める方法を模索しているところです。
――臨床と研究を通じて、どのような医療を実現したいですか。
広川先生 患者さんとご家族が、なるべく良い状況で人生を過ごせるように、その時点の医療でできる限りの“最適”を目指したい。必ずしもそれが理想そのものではないかもしれませんが、今できる最善を届ける。そして研究では、これまでできなかったことを少しでもできるようにして、医療の水準そのものを引き上げていく。その両輪が、私の目指すところです。
不安な家族に、正しい情報を――医師監修の意義

――専門医が情報発信に関わる意義を、どうお考えですか?
広川先生 今は本当にさまざまな情報があふれる時代です。何が正しいのか――もちろん私たちも間違えることはありますが、その分野に詳しく、国や学会などから一定の裏づけを得ている専門家が、しっかりとした情報を確約する。それはとても大切なことだと思います。情報の質を保証することが、重要なポイントになってくるはずです。
特に脳腫瘍などは緊急性が高く、ご両親は突然の状況に強い不安を抱えます。精神状態も普通ではないなかで、藁にもすがる思いで検索し、時に誤った情報に左右されてしまう。そういうときこそ、脳腫瘍とは何か、種類、治療の流れまで、何回かに分けて丁寧にお話しして、不安を取り除く。落ち着いた状態で一緒に最適な治療を考えていく――そのプロセスのなかで信頼関係が生まれます。診療の中でお話を伺う機会をより大切にするようになってからは、不安から複数の医療機関にご相談される方も、以前より少なくなったように感じています。
――AIが普及するなかで、医師の役割はどう変わるとお考えですか。
広川先生 テクノロジーが進化しても、小児医療のように、強い不安を抱えている親御さんの支えにならなければいけない領域では、コミュニケーション能力がどうしても必要です。臨床の知識や技術はもちろん大切ですが、いわばEQ(心の知能指数)に紐づくスキルは、AIによる代替が難しい、人間ならではの専門性だと思っています。そこはこれからますます大事になっていくでしょうね。
――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
広川先生 私の専門は、扱う人も症例も少なく、一般の方には分かりづらいところがあると思います。だからこそ、気軽に聞いていただければ、分かる範囲でなるべく分かりやすくお伝えします。子どものことになると、親御さんは自分のこと以上に不安になるものです。その気持ちは、一人の父親である私にもよく分かります。ですから、遠慮なく相談していただいて、一緒に考えていけたらと思っています。
たとえば、最近は赤ちゃんの頭の形に対するヘルメット治療も行われています。必要な症例には確かに有効ですが、すべての赤ちゃんに必要なわけではありません。頭の形がきれいなお子さんには『やる必要はないですよ』とお伝えして、安心して帰っていただく。親御さんのご不安を背景に必要性の乏しい治療まで勧めるのではなく、必要ないときには正直にそう伝える。それが、信頼関係を築くうえで何より大切だと考えています。
まとめ
健康・医療に関する情報があふれる今、コンテンツの正確さと信頼性はかつてないほど重要になっています。専門医による監修は、誤った情報が読者の判断に影響するリスクを未然に防ぐだけでなく、検索エンジンからの信頼性評価にもプラスに働きます。
株式会社メディコレの「メディコレWEB」は、専門医による監修をオンラインで手軽に受けられるサービスです。メディコレWEBについて、「オンライン完結!メディコレの医師監修サービス『メディコレWEB』とは?」でも紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。









